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残存歯質量を考える治療

開業当時より、歯はなるべく削らない方が良いと思ってやってきました。

丁度私が歯科医師になった頃に歯科用顕微鏡、フロアブルレジン(液体プラスチック)、ファイバーコアが出てきた事により、より削らない治療が可能となりました。

 

ただ、今の治療でもC2(中等度虫歯)でも虫歯でない健康な場所を削ります。(インレー)

これは1895年(明治28年)にブラック先生が提唱した方法になるのですが、未だに130年前の基準で治療を行っています。 

この方法を採用する大きなメリットは、技工士との共同治療になり歯科医師のチェアータイム(患者さんと関わる時間)が短縮でき、沢山の患者さんを効率よく治療出来ます。

 

ブラックの窩洞からの脱却などひと昔は言われていましたが、令和になっても明治時代に提唱された方法が今も現役基準です。。。

(ブラック先生は保存歯科の歴史の中でも超優秀な先生です) 

 

自分の健康な歯を削りたくない患者さんは顕微鏡学会の先生の歯科医院に行かれた方がいいと思います。 

 

と言うのがC2の話、

(イメージ的にC2は歯100のうちレジンで9削るのか15~18削るのか違いです) 

 

もっと削る量に差が出るのが、C3(神経まで達した虫歯)

このステージになると更に大きく削って治療を行うことが推奨されています。

ホント、何でそんなに歯削りたがる!?というぐらい削りますし、削ることを推奨するステージです。

   

私は健康は歯質がしっかり残った根管治療であれば、3mm程度の穴からアプローチします。

無理して、この穴から治療している訳ではなく必要最小限の切削で治療を行おうとすれば

この程度開ければ十分治療できます。

*ただし、開口量の少ない方の第2大臼歯は無理なこともあります。

  

3mmの穴だったら被せるのではなくレジンで蓋をしてしまいます。 

*昔やっていたセミナー動画

 

私が、歯科医師になった頃には神経治療は全ての根管口(神経管)が見える所まで大きく削ってから治療すべきものであり、大きく削らないときちんと根管治療できない!みたいな感じでしたが、

当時から「何で!?3根あっても同時に3根とも根管治療できる訳ではないでしょ!?」と思っていましたので、上の先生にも当然質問していました。

決まって、【髄角などの取り残しが出るから!】と言われていました。

   

話を戻して、C3になると

①神経治療の為に神経管を大きく削る

②土台を入れる為にさらに神経管の入り口付近を大きく削る

③クラウン(被せ物)を入れる為にエナメル質を全部削る

健康な歯を100とすると50~60近く歯を削ります。

これがC3治療です。

 

だからC2のうちにきちんと治療をしておくべきなんです!

 

また根管治療が上手く行かないと再治療で更にクラウン、土台、ガッタパーチャーを外す為に削る。

すると残る歯というのは20ぐらいになります。

 

この残った20の歯質で、元の咬む力に耐えさせなければならないなんて

今の私の見解だと長く持たせるには無理!

咬む力というのは健康な自分の歯で支えるものであって、人工物(セラミック、レジン、ファイバーコア)が力を吸収してくれる訳ではありません。

つまり健康な自分の歯が無くなれば無くなるほど咬む力に耐えられなくなって抜歯は近づきます。

 

漠然と治療を受けている患者さんが大半だと思いますが、こういった知識を持っているか!?そうでないかでも違いは出ると思います。

「歯なんて無くなったらインプラントとでいいよ!」という患者さん&先生ならいいと思います。

   

私はインプラントという治療選択肢を持たないので、何とか抜かずに持たせれないか!?と考えますが、やはり残存歯質というのは1つのポイントになると思っています。 

 

 

今回のケース 以前ブログで書かせて頂いた患者さん

2025 EEdental OOK (1).jpg

医療被曝大国!? - EE DENTAL_Blog 

 

先日土台毎クラウンが外れたとのことで来院いしてもらいました。

来院時のレントゲン

2025 EEdental OOK (3).jpg

大きな根尖病変は綺麗に治ってくれていたのですが・・・

 

とりあえず、腫れや痛みがないのでもう一度コアを作ることにしたのですが、

やっぱり。。。

DSC05363.jpg

 破折・・・

 

以前、K先生の講演で

歯の寿命は残存歯質量に依存するみたいな文献が出てきているし、そう思う的なことをおっしゃられていましたが、自分もホントそう思います。

  

後、経験則でコアごと外れてくるクラウンの多くは破折のことが殆どなので薄々嫌な感じはしていました。

因みに私はファイバーコアでは歯根破折の回避にはならないと思っています。

 

 

もう1つ懸念しているのが、根管充填材にMTAを使った事

MTAは封鎖性の高い材料で再々根管治療の際に私は使うことがありますが、MTAは製品により1~3%膨張があります、この膨張が歯の中から負担をかけているのでは!?というのも疑っています。

が、根尖が破壊されたようなケースではMTAを使った方が治りが良い場合もあるので難しい所ではあります。

(先日も抜髄でMTA・バイオセラミックを使うから自費根管治療になると保険医療機関で言われ、どうせ自費で根管治療するなら専門医にと転院されてきた方がいましたが、私は「いやいや、抜髄でMTA使わなくてもいいですよ、使うメリットが自分には分からない」と説明させてもらい、患者さんを困惑させてしまいましたが、ホント今の混合診療はカオスです)

 

極々普通の専門医ですが、補綴までやっているので歯を残す為にはどうすればいいのかを日々試行錯誤しております。

先人達が色々やっても解決しない、【ザ・歯根破折】

例に埋もれず私も壁にぶち当たり、歯科医療の限界を感じています。。。

 

今流行のAIにでも解決してもらえないかな(>。<) 

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