Home> 歯内療法日記 > 歯の神経を残されたい方へ注意事項

歯の神経を残されたい方へ注意事項

 EEデンタルには「神経を保存したい!!」

ということで来院して頂いている患者さんも多いのですが。

MTA直接覆髄法http://www.eedental.jp/mta.html

 

ちょっと、誤解と言うか間違って解釈されている方も多いので今回注意事項ということで(_ _|||)

 

質問1「神経は大切と言うが残した方がいいのか!?」 

A,神経は残した方がいいでしょう。

 

こう書くと何でもかんでも残せると思われてしまうのですが、

私の中の基準で言うと 

1、レントゲン上で虫歯が神経に達しているものは神経の保存を行いません。

2、現在症状がある歯(ズキズキ痛む、温かい物が凍みてその後持続痛が出る、冷たい物が強く凍みて生活に支障が出ている)の神経の保存も行いません。

3、過去にさかのぼって大きな痛みが継続して出た歯の神経の保存は行いません

4、削ってみると既に虫歯が神経に達していたものは神経の保存を行いません。

 

この場合私は神経の保存を行いません( ̄ロ ̄lll)

大きな症状が出てもしばらく我慢していると症状は落ち着きますが、その多くは神経が死んで症状がなくなります。

 

「え〜、駄目もとでもいいからやってよ」(っ´ω`c)

ということを希望される患者さんもいますが。。。

 

 

神経を無理に残すとどうなるのか!?

 

上手く行けば神経は保存できます。(ただし成功率は低いです)

ただ、失敗すると・・・

抜歯の確率がグンと上がります。

 

 

問題点1、神経が死んでしまい、根に病変ができます ⇒ 「感染根管」になっているということです。

 

エンド模型 (1).jpg

虫歯が大きいと

右の黒い神経:神経が死んでいる部分茶色の矢印部分

左の赤い神経:健康な神経

*大人の歯の場合、神経の一部が死ぬと全部の神経が悪くなっていきますので部分的の残す治療はお勧めできませんね・・・ 

 

 

 

 

神経が死んでしまうと、専門医が行った抜髄(初めて神経を取る)の成功率から成功率が10%低くなるという文献もありますハァ━(-д-;)━ァ...

 

 

このケースは私がMTA直接覆髄法を行い、1年後にレントゲンを撮ってみると・・・

神経が死んでおり、かなり大きな病変ができてしまっていたケースです(TT;

7番病変.jpg

 

5カ月後には大分骨も出来あがってきましたが、神経が死んでしまうとこのようなことになります。

 

 

問題点2、神経が死んで(腐って)しまい根の先に病変ができます。

膿がドバドバ出てくることもあります。 ←ショックです。

 

虫歯が大きい場合、治療直後に症状がなく神経が残ったと思っても徐々に神経が死んで行き

数年後:フィステルが出来・・・、歯を支える骨が溶けてきてしまう場合もあります。

根尖病変 壊死.jpg

赤丸の中の黒い部分が骨が溶かされてしまった部分 

右のレントゲンは神経を取った部分にゴム(ガッタパチャー)を詰めた後

 

 

 

問題点3、石灰化が起こり神経管が細くなる。(水道管のように太かったパイプがストローのようになる) 

⇒Q),「細くなると何か問題でも!?」(´・ω・`)

A),根管治療(神経の治療)が難しくなります。

 

具体的に言うと、

根管治療中にパフォレーション(歯に穴が開く)を起こす確率が上がってしまいます。

難しすぎますね^^;

図で説明、健康な歯の神経部分は黄色の矢印のように大きな神経の空間(3LDK)

虫歯や大きな詰め物がしてあると青い矢印のように細い神経になります(1K)

エンド模型 (4).jpg

 

神経付近まで削って治療した歯、虫歯の大きな歯などは石灰化(体の防御反応)を起こしてしまいこのように神経が細くなっていきます(★★) 

 

 

下の図の赤矢印のように歯の下の方にに穴を開けることがあります(´ヘ`;)

  

根管治療は見えないが故に手先の感覚で治療する部分も多々あります。

神経まで達したかどうかは特にこの感覚に頼る(落とし穴に落ちたような感覚)のですが、神経管が狭まってしまっていると手に伝わる感覚がなくどこまでも削ってしまい・・・

図7.jpg

 

つい先日、削り過ぎで歯に穴が開き転院されてきた方のレントゲン

図1.jpg

 

特殊なことをすれば穴を埋めることは出来ますが、非常に時間と手間がかかります。

 (穴が開いたら抜歯ということもあります)

 

パフォレーションリペアhttp://www.youtube.com/watch?v=1bGv2hljO5I

 

 

次に、このように歯の途中に勢いよく石灰化が起こると・・・

 

図2.jpg

 

根の途中に石灰化が起こり、膿の原因の根の先端の掃除が出来なくなっている。

(トンネルの落石事故のようなものです) 

専門でしているので治療できないことはないですが、まず裸眼での治療は・・・ 

このケースは顕微鏡でチマチマ途中の石灰化物を削って治療しますが、非常に手間がかかります。

 

術直後(何とか根の先まで治療できました)

2bann (1).jpg 

 

6カ月後

 si.jpg

上手く治ってきてくれてます(v^ー°)

 

 

本来あった神経管も細くなりすぎてレントゲンにはっきり写らなくなることもあります。

もともと神経管は水道管のように太いパイプであったものが、石灰化により非常に細いストローのようになります。

 

(左上のレントゲンの黒い線が神経部分なのですが、細くなりすぎて黒い線が見えにくいです)

図4.jpg

 

このケースは4mmの穴からアプローチして湾曲した4本の神経管を処置しました。

治療はできますが、非常に特殊な道具が必要になってきます(。´-д-)

 (このケースも通常の治療時間より1時間半ぐらい長くかかっています)

 

途中の結論

神経を保存させた歯では石灰化が起こり、歯の神経が細くなります。

⇒すると後の神経の処置の難易度がかなり上がります。

 

楽勝でやっつけられると思っていた『F型のザク』が、

気づくと『S型のシャアザク』に時期が悪いとサイコミューを使う『ジオング』に^^;

(↑分りにくい!!)

 

みたいなこともあります。

 

 

たまに私は患者さんに厳しいことをいうこともありますm(_ _)m

「神経を残されたいんですか!? それとも歯を残されたいんですか!?」

 

私はなるべく神経が残るように、なるべく健康な歯が残るように治療は行っています。

 神経を取る時期って歯を残す視点から見た時には凄く重要なのですよ、後手になると非常に治療の難易度が上がり・・・

 

ここで1つ、

根の治療の成功率を上げるには

「出来るだけ早い時期に神経を取る」というのも1つのポイントになります(´・ω・)ノ

言い換えると

青信号で横断歩道を渡った方が事故に遭う確率は低い訳です。

赤信号で横断歩道を渡れば下手をすれば死に至る(抜歯)になることも多いのです。

 

虫歯が大きい=黄色信号(*´ω`)(´ω`*)

であり、信号と同じで黄色信号はいつ赤になるのかは分らない状態なのです。(p・Д・;)

 

私の中の感覚として青から黄色に変わったものは残せる見込みがあります。

この時点で神経は取らないといけないと判断する先生もおられます。ただこれは先ほど書いたようにある面、根の治療の成功率を上げれるという面も持ち合わせております。

 

最初に書いた、

1、レントゲン上で虫歯が神経に達しているものは神経の保存を行いません。

2、現在症状がある歯(ズキズキ痛む、温かい物が凍みてその後持続痛が出る、冷たい物が強く凍みて生活に支障が出ている)の神経の保存も行いません。

3、過去にさかのぼって大きな痛みが継続して出た歯の神経の保存は行いません

4、削ってみると既に虫歯が神経に達していたものは神経の保存を行いません。

 

と言うのは神経があっても、私のなかでは、既に赤信号な訳です(*ノω<*) 

この辺に厳密な線引はできませんし、日本人の大好きな数字でも表せません。

 

 

大きな虫歯で時間をかけて神経の保存治療をしても術後にも症状が出てしまうことがあります。

 

様子をみていい症状と、様子をみてはいけない痛みが存在します。

・ズキズキ痛む(´Д`;)

・温かい物を飲んだと気にズキズキ痛む(´Д`;)

この2つ症状は、体の方が神経を取ってくれ、処置が間違えているととシグナルを出しているのです。

 *この辺のことは受付のクリアーファイルに詳しく書いてあるので、来院中の患者さんは持って帰って読んでください(^o^)

  

この状態で長期間様子をみていると・・・

痛みを体が覚えてしまい、根管治療を行っても体が覚えた痛みだけが残ってしまいます。

  

元々は歯から痛みのシグナルが出ていたんですが、痛みを伝える神経が混乱してしまい歯自体は治ったのですが、

混乱した神経は治らず痛みを発信し続けます。(この場合何度神経の治療を行っても痛みは取れません)

  

こうなってしまうと歯科では対処できなく、神経内科に行って治療を受ける必要が出てきます。

*また神経内科などで治療を受けても治る保証はなく、一生痛みと生活する場合もあります。

 

 

 

私は根の治療が専門なので、痛みが出た歯(自発痛)に関しては、速やかに神経の治療に入ります。

 

  

リスクが小さければ様子をみるのも1つでしょうが、

このような大きなリスクがあるような場合、私は勝率の悪いギャンブルはしません!

 

 

昨日書いたように、条件の良い歯ではこのような修復もできますし、

http://eedental.jp/eeblog/2010/10/post-169.html

6番 抜髄 (5).png

 

 

 

注意)、これは私の中の基準であり、絶対的な基準ではありません。

以前学会発表の時に色々調べてみたのですが、基準はありませんでした。

 

 

根の治療がちょっとだけ得意なので何かあった際には対処できるオプションは多少持ち合わせていますが、問題が起こってから対処するのはお勧めできません!!

 

 

 結論

先に上げたリスクを飲んでも無理やりに神経を残しますか!?

それとも考え方の転換をして歯の寿命を延ばし生活の質を維持・安定させますか!?

 

 

 

あっ、当然残せる神経は残しますよ^^

CC2.jpg

 8歳の女の子後続永久歯がないので何とか神経の保存を行いました。

 (ここまで虫歯が大きくても残る神経は健康な状態でのこります)

 

 

以上、歯の神経を残されたい方へ注意事項でした。

(長っ!)

Index of all entries

Home> 歯内療法日記 > 歯の神経を残されたい方へ注意事項

購読
Powerd By

Return to page top