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根尖を削れば治る、貼薬剤を入れれば治るという間違った理解

最近は減りつつありますが、たまにあるケースです。

これやっている先生、やられている患者さんがおられましたら歯内療法専門医に早目に相談された方がいいと思います。

    

私が大学生だった頃、教えられたのは根管治療は削れ、削れとよくライター(指導医)に言われ、

抜去歯での練習でもライターチェックを受けると

「後、3号上まで拡大してきて」(後、歯の中を1.5mm太くして)

学生なので、『はい』というだけで指示に従っていました。

前歯なんか、今の自分では【おいおいもう削るの止めておけ!】ぐらい太くしていました。

 

仕方がないんですが、トレンドなんですよね。

今の根管治療は次亜塩素酸ナトリウムなどの消毒液で細菌数を減らす方向になっています。

削る作業は必要最小限に留めるのが今のトレンドで、昔のように大きく・太く削るのは過去の考え方です。

 

今回のケース

患者さんは50代女性

急に左上1に痛みが出てしまい、歯科医院に行くと神経の治療が必要とのことで根管治療スタート

術前時特に大きな虫歯などは無かった。

最初の歯科医院で7ヵ月ぐらい根管治療を続けるも治らず、転院

また転院先で根管治療を続けるも痛みが取れない、都合30回ぐらい根管治療を続けている状態で

大学病院に行くも「消毒しかない」と言われ、EEデンタルへ 

 

現在は治療中の左上1より右上1・2の方が気になる。治療中の左上1はたまにズキズキする程度

過去に1度だけ腫れたことがある。

   

レントゲン

2025 EEdental TKa (1).jpg

右上のピンクの神経管に対して4倍近く太く削られており、あまり触らない方がよい根の先もだいぶ削られ、根尖破壊が見られます。

ただし、根尖病変は見られません。(30回も根管治療していればこうなってしまいます)  

 

経験則で、これは「削り過ぎ」だなと判断しました。

また抜髄スタートから8ヵ月も根尖を突かれていると思われるので、患者さんには

「経験則で話すと、たぶん痛みはすぐには取れないと思います。 痛みが取れるパターンは2~3ヵ月ぐらいして、痛みの頻度・大きさが減り、半年後ぐらいに『あれ!?最近いたみないな!?』みたいな感じで治るパターンがありますが、多少の違和感程度のものは残ることもあります」

と説明(こういうパターンは毎回同じ話します。)

  

治療1回目

仮蓋を除去してみると、ペリオドンの臭い。。。

「えっ、そっちのパターン!?」

レントゲンから削り過ぎで痛みが出ていたパターンだと思っていたら、どうやら複合因子でペリオドンを貼薬して痛みを長期化させているよう・・・

歯の神経治療は要注意!特に女性!! - EE DENTAL_Blog

またこれだけ太く削っている割には、入口付近の髄角の歯髄は取り残していました。。。

 

歯の先の方の根尖は、唇側方向にトランスポーテーションを起こしており、本来のオリジナルの根尖が口蓋側にありました。(鏡餅のような形)

つまり太く削っていても問題無い部分をゴリゴリ削って傷口を広げているだけ。

見えている人間からすれば、やっちゃダメ!と分かるのですが、見えていない先生は更に削って治そうとします。(ステンレスファイルの特性で太いファイルほど根管を直線化させます)

削る必要ないぐらい太く削られているので、この日は消毒液で徹底的に洗って無貼薬で終了。

  

1回目の治療で分かったのは医原性の問題がたくさん作られている・・・(>。<)

(先生も治そうと頑張ってくれたのだとは思いますが) 

   

1か月後の治療2回目 インタビューのみ  

治療後から腫れて来た感じがあり、歯に物が当たると痛い。

痛み止めを飲むほどは痛くなかった。

レントゲン

2025 EEdental TKa (2).jpg

特に所見に変化なし

  

更に1か月後の治療3回目

腫れ感、痛みはあるとのこと 

歯の中をもう一度洗浄(根管内は削らない)

 

更に1か月後の治療4回目

腫れ感は無くなり、痛みもほぼないぐらいに落ち着いている

ということでMTA+で根管充填+レジンコア+レジン充填

2025 EEdental TKa (3).jpg

 

根管充填後3ヵ月

歯に物が当たると痛い、普通の時は痛くない

患者さんには痛みが減っている傾向にあるので、待てば痛みも治まる可能性が高いことを説明

 

ここから諸事情で来院が途絶え経過が追えていませんでしたが、 

久しぶりに来院されたのでレントゲンを撮らせてもらいました。

治療後2年4ヵ月

2025 EEdental TKa (5).jpg 

特に問題はありません。

症状も根管充填後6ヵ月後ぐらいから全く無くなり、今も痛みは出ていないそう。

*たまたま、最初に説明させてもらったパターン通りでした。 

 

OK,OK、おおよそのパターンに乗っており治ってくれたようです。

 

これって、不適切な根管治療により患者さんに植え付けられる医原性の痛みです。

結果から言えば、今回のケース触り過ぎ&ペリオドンの不適切な使い方が原因になっています。 

 

GPの先生も大学時代に教えられたことがメインだと思います。

ただ、その治療というのは30年以上前のやり方であることが多く、今の治し方ではありません。

全ての歯科医師が全分野のトレンドを追う必要はないと思いますが、3ヵ月やっても改善しないようなケースは闇雲治療しても症状を悪化させるだけなので、3ヵ月やって収まらないケースはなるべく専門の医療機関を紹介してください。

 

また患者さんも、ある程度の所でその歯科医院に見切りを付けた方がいいケースもあると知ってもらった方がいいと思います。

転院は患者さんの権利ですし、歯科医師に気を使って痛みに耐え、歯を失う必要はありません。 

 

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