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歯内療法日記: 2023年4月アーカイブ
第2大臼歯の意図的再移植術
- 2023年4月28日 09:02
- 歯内療法日記
患者さんは30代女性
8年前に根管治療を行った、最近になり咬むと痛みを感じる。
ちょっと前に近医でクラウンを外し抗生剤をもらった、その際太い土台が入っていることを指摘され、
膿も貯まっていないので症状が落ち着いたら根管治療なしでクラウンを入れてみては!?と提案された。
心配で一度話を聞いてみたいとのことで来院
レントゲンを撮ると、
少し大きめの根尖病変が見られ、また大きな金属の土台も入っています。
過去の治療で近心頬側根も手づかずのように見えます。
ちょっと難しそうな歯だったので、CBCTで見てみると、近心頬側根と口蓋根がイスムスで繋がるパターン
たまにある第2大臼歯の根癒合(根がくっ付いている)パターン
このパターンの場合一度細菌感染してしまうと経験上予後があまりよろしくない・・・
なので1回目の菌が殆どいない状態で根管治療はしっかり仕上げた方がいいのですが感染してしまったものは仕方がありません。
患者さんにはメタルポスト(金属の土台)は問題なく外せるが、癒合している歯の為
予後が悪ければ、意図的差移植術 or 抜歯になると説明
根管治療を行うと
案の定、MB根とP根はイスムスで繋がっており、超音波でその部分を丁寧に切削洗浄を行うも
MB根は石灰化を起こしており、根尖まで追えない状態に・・・
患者さんには、神経管が石灰化で埋まってしまっていることを説明し、徹底的に洗浄し根管充填
*レントゲンで薬(ゴム)が入っているかのように問題のない健康な歯の部分を人為的に削っても上手くは行きません。
今回のような根の先まで治療できなかった場合の成功率は6割であることを説明
*6割はこの状態でも治ります。
根管治療で根の先まで掃除できない場合 - EE DENTAL_Blog
ただ・・・
今回のケース
術後9か月後のレントゲンで根尖病変が大きくなってしまった所見になってしまいました・・・
患者さんには、以前の金属の土台で残っている歯質が薄い為、意図的差移植術の最中に歯が折れてしまう可能性をお話し、意図的差移植術をさせてもらいました。
流れは、①一度歯を抜歯
幸い折れずに抜くことができました。
勤務医の頃は埋まっている親知らずの抜歯までしていましたが、開業して抜歯は年に数本となりかなり慎重に抜歯しています(笑)
②根の先をカット(私はラウンドバーでカットします)
*全て顕微鏡下で側枝など細い神経管の出口など確認しながら行います。
カットした後、
③MTAを入れる為の逆根管充填用の穴を掘ります。
出口をセメントで埋めてしまった方が成功率が高くなります。
③作った穴にMTAを入れる
緊密にMTAを入れ、ここまで15分を目標に行います。
抜いた歯の表面が乾燥させると歯根膜表面の細胞が死んでしまう為
なるべくスムーズな治療が必要とされ、原則20分以内が望ましい とされます。
④歯を抜いた穴に入れ元の位置に戻します。
意図的再移植術は抜いた穴に入れれるので、私はスーパーボンド固定やナート(糸)固定はしていません。
レントゲン 外科前 ⇒ 意図的再移植術後
患者さんには2~3日歯ごたえのあるものは食べないように指導
今週1年後のレントゲンで診察させて頂きました。
患者さんは、症状も一切ないようで普通に使えるとのこと。
レントゲン所見では、病変はかなり綺麗に治って来てくれ骨もしっかりできています。
第2大臼歯は根の形や神経管が複雑で顕微鏡での確認治療は歯を長く持たせるためには大切だと感じます( 'Θ')ノ
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歯の外に出たMTAが吸収する場合と吸収しない場合
- 2023年4月22日 09:00
- 歯内療法日記
患者さんは40代男性
最初の来院は私が開業して3年目の2010年
半年前から歯茎から膿が出るようになった。
第一大臼歯のMB根に根尖病変が見られます。
まずは通法の根管治療を行い
根尖病変のあるMB根は発達したフィンがあり、根尖も広く削られていましたのでMTAで根管充填
その後、仮歯を入れ経過を見て行ったのですが、
半年してもフィステルや痛みは出ないものの根尖病変に変化なし
当時は半年後の所見で治癒傾向が出なければ速やかに外科的歯内療法に切り替えていました。
現在は、フィステルと痛みがなければ1年近く待ちます。
経験の中で骨の治りが遅い人もいて、1年経ってから病変が小さくなる場合も極稀にあります。
外科的歯内療法
外科をしてみると、上からでは開けれなかったMB2の出口が黒変しており
その部分が感染源と思われその部分を処理してMTAを逆根管充填
半年後
根管治療後半年しても変化の無かった病変が外科後半年でかなり小さくなりました。
この後、ゴールドクラウンを入れさせてもらいました。
何とか保存できたケースですが、この当時は外科の際にカットした断面にMTAを残していました。
先日患者さんが別件で来院されたのでレントゲンを撮らせてもらいました。
根尖病変は綺麗に治ってくれたのが確認できます。
それと外に出してあったMTAも綺麗に無くなっており、逆根管充填した根管内のMTAのみが残っています。
因みに右上8の親知らずは右下の移植に利用させてもらいました。
また右上7の手づかずのMB根は特に根尖病変が無い為触らない方がいいと説明しそのままです。
先生の中には治療痕がないから根管治療をやり直した方がいいと判断される先生もいますが、
私は細菌感染していないから治療自体は上手く行っていると判断します。
今後もし病変ができた際に根管治療すればいいと説明しています。
こんな感じで歯の外に出ているMTAが吸収する場合となかなか吸収しない場合の2パターンあり
体のルールというものは何で分かれるのか!?興味がある所です。
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膿が出て腫れる歯を何とか残せないか!?
- 2023年4月19日 09:01
- 歯内療法日記
患者さんは40代 女性
20年前に神経を取りその後腫れてきてしまい、再根管治療を行ったが再び腫れてきてしまい
現在再々根管治療を行いレーザー治療を2回しているが歯茎からの膿が止らない為
オープン(仮蓋なし)の状態
レントゲンとCBCTで診査を行うと
MB根に大きな根尖病変が見られます。
*レントゲンでは確認にしくいのですがCBCTで見るとかなり大きな病変が確認できました。
ただ、現在やっている治療ですが、隔壁を作らずレーザー治療しても・・・
根管治療の失敗の多くは細菌感染の有無です。
まずやるべきことは、菌が入らないような環境を作り、その後歯の中の菌を減らすことで初めて治癒機転が作れます。
どうしても日本の保険治療費(2回目以降500円程度)では厳しい面も確かにありますね。
*物価のことはよくニュースで言われますが、保険料の改定は・・・
正直、タイの治療費を聞いて驚きました。
上手な先生の歯科医院ではレジン1本2~3万円するそうで、日本は設備は超一級品、世界一クリーンな環境で、治療費は4000円と後進国以下。。。
正直、後進国以下の治療費で結果を出さないといけない保険医の先生は大変だと思います。
まぁ、愚痴話は置いておいて、
歯を残す為にまず行うことは、
きちんと接着処理した隔壁(唾液・菌が入らないように煙突の筒を作ります)
過去に2回根管治療を行っているので歯茎の下から歯がありませんでした。
電メスで歯肉をトリミングして、出血をコントロールしてレジンを流す。
ここまでで治療時間45分
根管治療は基本が本当に大切だと思っているので、ここは時間をかける所
その後、ラバーダムをして過去の人工物を除去、
根尖病変の大きかったMB根は案の定、もう1本の神経管(MB2)と太めのイスムス(細い神経管の枝)が出てきたのでその部分も処理を行い、その後徹底的な根管洗浄
治療2回目(1か月後)
腫れ・膿も止まり痛みもないことより根管充填+土台+仮歯
MB,DB,P根は穿通はありませんでした、MB2のみ根尖まで穿通を行えました。
*根尖病変のない根管は無理に開ける方が問題が起こりますのでこれでOK
その後仮歯で生活してもらい、
半年後の今月レントゲン検診で来院してもらいました。
腫れや痛みもなく生活できているとのこと、レントゲンでも歯根膜が綺麗に戻ってきており
かなり上手く治ってきてくれています!
ここまで治れば本歯を入れても問題ないでしょう!
根管治療はホント、手間と時間がかかる治療です。
数千円の治療費では難しい歯は抜いてしまい、インプラントになれば根管治療より手間のかからない治療で40万近く治療費が頂けるので、どうしても歯は無くなる傾向にあります・・・
ここの部分は歯科医師に批判がきますが、これは日本の国が描いた日本の歯科医療の形でしょうがないと私は思います。
日本の状況的に歯科医療を立て直す優先順位はかなり低いものとなっているので、
今後も抜歯 → インプラントの現状は残念ながら変わらないと思います。。。
自分の歯を長く使いたい患者さんは、①なるべく神経を取らないように、②もし神経の治療になったら1回目の根管治療でその歯の運命が大きく分かれると覚えてください。
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側枝から大きく骨が溶けた犬歯の根管治療から12年
- 2023年4月11日 09:00
- 歯内療法日記
患者さんは40代女性
過去にEEデンタルで全顎治療をさせて頂き、レジンの着色を綺麗にしたいとのことで来院
ちょっと気になっていた歯があったのでレントゲンを撮らせてもらいました。
2011年 術前時
よく見ると、縦長の黒い部分に真ん丸な黒い円が見えます。
こういった唇側から舌側にトンネル状に抜けた部分は根尖病変が治ってきても骨ができにくいです。
根管充填すると側枝からシーラーが飛び出しています。
イメージ的に側枝からの感染でここまで大きな根尖病変ができたのか!?
先日来院されたので レントゲンを撮らせてもらいました。
術後10年以上経過するとここまで治るんだなと、勉強させてもらいました。
先日もセミナーで受講された先生がどうしても治さないといけないケースで
「病変が大きいから治せるか不安」と言われていましたが、
個人的には『病変が大きい=治りにくい』とはあまり思っていなくて、
病変が小さなケースでも感染源が取れなければ治りませんし、病変が大きくても感染源さえ処理できれば時間と共に骨は出来上がってくれます。
逆にいえば、神経がしんでしまったネクローシスパルプで若い患者さんだと
急激に病変が広がるケースもたまにあります。
つまり病変は原因ではなく、原因は細菌が住み着いた歯の中にあるので
その部分がどの程度きちんと治療出来たか!?で予後は決まってくると思います。
今回の患者さん全く症状なく経過しているそうです。
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治療後8年経過後の痛み
- 2023年4月 8日 09:00
- 歯内療法日記
患者さんは40代の歯科医師の先生
2014年に全顎治療をさせて頂きました。
2023年に入り、先生からメールがあり右上の歯が痛み出したとのこと
>5日前くらいから右上6に自発痛が発現しズキズキするような辛い痛みが続いています。
>持続性の温水痛があり、打診痛(+)です。
>8年前に歯髄に近いカリエスの治療をしていただいた歯なのですが根管治療が必要な状況になっているのではないかと考えております。
2014年のレントゲン
実際診させて頂くと、メールを頂いてから2週間以上が経過しておりピークは過ぎ痛みもないとのこと
疑われるのは神経が死んで症状が止ったと考えられます。
これで痛みがないから様子をみると。。。
先日の患者さんの様に膿んで大事になることがあります。
耳鼻科受診時に歯が原因の上顎洞炎になっていると言われた。 - EE DENTAL_Blog
事前にメールでレントゲンやCBCTデーターを頂いていたので、先生には
長目に時間を頂き1回法で仕上げると説明
術前
ぶっちゃけ、今より上手では!?と思わせるレジン充填(笑)
ここから3mmの穴を開け根管治療(治療時間1時間50分)
MB根のガッタパーチャーが少しショートしてしまいましたが、
根尖(根の先)まで探して根管形成(MBに合流するMB2も処置しています)+洗浄しているので全く問題ないと判断
3mmの穴は再びレジンで充填
治療後の歯
私自身、大きな虫歯治療を行い8年後に痛みが出てきたケースは初めてでした。
この後、1年後にレントゲン検診を行います。
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耳鼻科受診時に歯が原因の上顎洞炎になっていると言われた。
- 2023年4月 7日 09:00
- 歯内療法日記
患者さんは50代男性
1週間前に咬んだら歯がどんどん痛くなった、鼻の症状が続く為耳鼻科を受診しCTを撮った所
歯の根元に膿を確認され、歯科が原因の上顎洞炎になっていると説明された。
抗生剤を処方され、今はだいぶ痛みなどの症状も落ち着きつつある。
一番奥の歯は3年前に痛みがあり虫歯治療をしてもらい、1年前にも痛みが再び出た。
その際先生に「知覚過敏」と説明され、シミテクトで磨いていたら症状が治まった。
レントゲンを撮らせてもらうと
3根とも根尖病変が見られます。
CBCTで診察すると
どうやら、3つある根尖病変のうち一番治療の難しいMB根が上顎洞炎の原因になっているっぽい
治療1回目
過去の人工物を除去すると、過去の治療で既に露髄(虫歯が神経に達する)しており
神経は完全に死んでおり、出血などは一切なし
ここから推測されるのは、3年前の治療で神経が弱り、1年前の痛みは既に神経が死んできて
最後のアラームを鳴らすように痛みというシグナルで悪い所を教えてくれたのですが、
そのシグナルを見落とし今回のような歯髄壊死 ⇒ 根尖病変 ⇒ 上顎洞炎 と症状が悪化したものと考えられます。
実際自分であれば、3年前の自発痛が出た時点で抜髄を勧めたケースかも!?
何とか神経を残してあげたいという先生の気持ちも分からなくはないですが・・・
下手に神経を残すと今回のようなことになる典型ではあります。
治療1回目で全ての根管を探し、形成、徹底的な洗浄を行う。
治療2回目(3週間後)
腫れや痛みもなく鼻の方も調子が良い!ということで根管充填(ガッタパーチャー使用)
この後、仮歯を入れ経過観察
レントゲン診査
腫れや痛み、違和感もなく鼻の症状も改善したとのこと
いつもは定期健診時にCBCTは撮らないのですが、今回上顎洞炎になっていたので
CBCTを撮らせてもらいました。
3根共根尖病変がなおりつつあり骨も出来てきてくれています。
特に上顎洞へ炎症を波及させていたMB根も治りつつあり、穴の開いた部分も骨が見えます。
今回のような虫歯治療時に露髄させてしまい神経が死んでしまうパターン
どうしても裸眼で見ていると小さな露髄は仕方がない面はありますが、
その後の症状でどう判断するかで将来が大きく変わってくることがあります。
歯科は診断(知識と経験)をまず当て、その後治療(技術)で治すという2つ成功させないと上手くいかないので難しい分野だと感じます。
今回のケース1年後にもう一度レントゲンを撮って終わりになります。
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