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歯内療法日記: 2024年6月アーカイブ
毎週根管治療(貼薬)している歯が治らない
- 2024年6月29日 09:00
- 歯内療法日記
取引先の技工所の方の親族の方で患者さんは50代女性
痛みが出た為近医で根管治療をスタートしたが治らない とのこと
話を聞くと、3ヵ月前から治療を開始し毎週薬の交換(貼薬)に行っているが
腫れたり、痛んだりを繰り返していて今は鈍痛があり歯の奥の方が腫れている感じがするとのこと
レントゲン
大きな根尖病変があります。
歯茎の上にベチャっと仮蓋がしてあるのですが、隔壁をしていない為
隙間から唾液(+細菌)が入り込んでいるような環境
客観的に言って、これで毎週薬を替えても治る見込みは少ないと思います。
理由は歯の中に菌が容易に入れる環境があるので、薬を入れてもすぐに再感染してしまう。
またこの薬の交換で治すという術式は古い術式で、私はこの方法は行っていません、むしろ貼薬剤は入れていません。
ただ、前にも書いたように今の保険治療は諸外国に比べかなり費用面を抑えているので、現代の標準治療が行いずらいのも事実です。
*海外の根管治療費、おおよそ10万近く 日本の保険治療1万円(うち3割負担で3000円)
例えば唾液が入らないような、下処理である「隔壁(壁を作る)」これは今の時代根管治療を行うにはマストな治療工程なのですが、保険治療ではこの工程には治療費が付かず歯科医院側の負担(やりなら無料でやってあげてね!という国のスタンス)
ただでさえ保険根管治療は赤字分野なので、赤字が大きくなるような余計な工程は増やせません。
こういう事を書くと、歯科医師の怠慢ととらえられる方がおられますが、自分の仕事毎回赤字出して会社経営できますか!? と同じことです。
医療も経済活動の1つですから、赤字ではスタッフも雇えません。
ただ、歯を残す為にやるべきことは細菌感染が起こりずらい環境作りから
ということで、治療1日目は虫歯をきちんと取り、隔壁を作り、その後ラバーダムオリジナルの根管を探し、削る&消毒、最近が入りにくい蓋を作る。
*前回の治療、今回の治療と感染しているオリジナルの神経管は手付かずの状態でした。
1回目の治療で壁を作り、歯の中の人工物&汚れを除去して、細菌の数を減らし体が治そうとする力を引き出します。
治療2回目 腫れていないのを確認して根管充填+レジンコア+仮歯まで
私は、膿などの所見が無ければ治療をどんどん前に進めます。
ここから仮歯で生活してもらい
8ヵ月後のレントゲン 患者さんは時々痛むとのこと
レントゲンでは あれだけ大きかった根尖病変はほぼ無くなり上顎洞底線も復活してきてくれています。
*歯の外に横に繋がる白い線が見えます。
この状態であれば補綴しても大丈夫でしょう。
また痛みもそれほど大きくないようなので様子見をすることにしました。
*レントゲンでは治る所見に変わっても、根管治療後痛みが残る人は一定数います。全ての患者さんが無痛で元の状況に戻る訳ではありません。
**痛みは術前に比べ弱くなっており痛みの頻度も減ってきていればそのまま様子をみた方がいい場合もあります。ただ、レントゲン所見が良くなっても痛みの大きさと頻度が変わらない場合は非歯原性歯痛を疑った方がいいと思います。
根管治療の失敗による腫れと痛みは細菌感染が引き起こしているものが殆どです。
その感染経路を遮断し、歯の中にいる細菌数を極端に減らすことで治癒に導けます。
まぁ、書くのは簡単ですがやるのは非常に手間のかかるのが根管治療です(笑)
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メンテナンスの歯科医院選び
- 2024年6月26日 09:04
- 歯内療法日記
基本的にEEデンタル 歯周病治療をしていない為
治療終了後は近所の歯科医院でいいから年に1回ぐらい掃除と虫歯チェックに行ってね!と説明しています。
ただ、患者さんにとってはこれのハードルが高いようで・・・
先日、昔から来院して頂いている患者さんから連絡があり、
以前私が治療した場所の根尖病変や他の歯の治療を勧められたので見てもらいたいと連絡をもらいました。
この患者さんは昔から来て頂いている患者さんで、痛みを抱えやすく最初に来院した歯に関しては1年近く根管治療しているが痛みが取れないので見てもらいたいと来院されましたが、私が根管治療を行っても痛みが取れず、井川先生から非定型歯痛と診断が下り薬物療法で2年近くかけ痛みを取った患者さんでした。
そんな経緯があり、他の歯の治療も私が担当させて頂きました。(10年前)
場所を聞くと右上4の再治療(抜歯!?)をする必要があると言われたそう。
この歯は色々歴史がありまして、
口腔外科で歯根端切除を行い仮蓋のままでした、仮歯で経過を見ましたが
悪い感じも無かったので2014年セラミッククラウンSet
2017年辺りから多少違和感が出てくる。
2022年 腫れがでてしまいレントゲンを撮ると透過像が出てきており
患者さんに再外科を行うか!?と説明し
外科的歯内療法を行う
*口腔外科の歯根端切除成功率5~6割 歯内療法専門医の外科的歯内療法成功率8~9割
外科的歯内療法後1年(2023年にレントゲン撮影)
外科処置がうまく行ったようで骨の回復が見られた所まで確認しました。
で、患者さんが久しぶりに掃除に行こうと思い立ち、初めて行った歯科医院で
右上4に病変があり、他にも古い詰め物がありやり直しの治療が必要と言われ
患者さんは「えっ!? 掃除に来たのに治療!?」
凄く不安になり「治療はいいです」と言って断ったらしいのですが、
やっぱり歯科医師にそう言われてしまうと心配になりEEデンタルへ来院
レントゲンを撮ると
えっ!?、悪くない
患者さんもネットで色々調べ、CBCTを撮りたいとのこと
やっぱり、悪くない!
後、詰め物が古いからやり直す必要ありという先生の基準も全くもって分からない・・・
患者さんは先生に「悪い」と言われれば治療しなくてはいけないという立場
ただ、本当に治す必要があるかどうかは患者さんには理解できません。
またいつも書くように治療の介入が必要・不必要は同じ歯を見ても先生毎に違いがあります。
私の考えは歯科医師の治療=歯の寿命を縮めるという考えの元
なるべく最小限の医療介入で1度できちんと治すを行わないと歯は長く持たないと感じているので不用意な治療は避けた方がいいと思っています。
今回のケースなどは歯科医院を変える度に起ることなので、珍しくはありませんが・・・
治療が終わった患者さんへメンテナンスの歯科医院を探す際、予約時に
「治療は他の歯科医院(EEデンタル)でやっているので、掃除だけしてもらえますか!?」と問い合わせをしてOKが出る歯科医院で診てもらってください。
先生の中には、「なぜ当院で治療しない!」と怒る先生もおられるのでポイントとしては最初の電話で掃除だけしてもらいたいと話してください。
歯周病の治療やメンテナンスなどは今後もしないと思いますので、患者さんにはご迷惑をおかけしますm(_ _;)m
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抜歯宣告でも残っていますよシリーズ
- 2024年6月21日 09:00
- 歯内療法日記
患者さんは30台男性
今は痛みはないが、風邪を引いた際に歯が浮くような感じが前々からあった。
歯がかけた為近医を受診 抜歯が妥当と診断を受ける・・・
レントゲン
歯の周りの骨が大きく減っており、抜歯も仕方がない という状況
当時患者さんも30代前半だった為
残す方向でトライしてみるか説明し、根管治療を行いました。
僅か半年程度で骨の回復も確認できたので、
この後ゴールドアンレーを入れ咬み合わせを作りました。
先日この患者さんも別件で来院されたので、レントゲンを撮らせてもらいました。
かなり綺麗に骨が出来てきてくれています!
きちんと治療を行うと残る場合は残ってくれますが、術前時に「これ残りますよ」とは全く言えません。
このケースもたまたま残ってくれたケースです。
多少エナメル質のチッピング(かけ)が見られましたが簡単なリペアで十分でした。
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残せる歯は残す!
- 2024年6月14日 09:00
- 歯内療法日記
患者さんは40代女性
左下の親知らずの影響で左下7に大きな虫歯
過去に神経を取る処置をしていた為、ここまで大きな虫歯ですが痛みはありません。
逆にいうと神経を取ってしまったから痛みもなくここまで虫歯が大きくなってしまいました。
ここまで大きな虫歯だと親知らず含め2本の抜歯が一般的ですが、
当時患者さんは30代だった為、親知らずを抜いて第2大臼歯の保存治療を行いました。
隔壁後根管治療を行いました。
支持骨は少なかったですが、幸い動揺も殆どなし。
ただ、この歯にクラウンを入れてもすぐに抜歯になりそうだったので、レジン充填でフィニッシュとしました。
この治療をさせて頂いた患者さん、
今週別件で来院されたのでついでにレントゲンを撮らせてもらいました。
術後13年経過しましたが、問題無いとのこと
ということでこのまま使ってもらうことにしました。
抜く、抜かないは先生毎に判断が異なります。
私も抜歯宣告をすることはちょくちょくありますが、多少でも残りそうな雰囲気があれば
「難しいですけど、残す方向でトライしてみます!?」
と言うのが年に数本あります。
今回のケースも、一般的にいえば90%以上抜歯が妥当と判断すると思います。
でも、10年以上持っている!(笑)
たまたま上手く行ったケースですが、もう10年持ってくれるといいのですが( ・ω・)/
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オリジナルの根管を探す大変さ!
- 2024年6月12日 09:00
- 歯内療法日記
患者さんは40代女性
主訴は左上の奥歯
歯茎が腫れてきた為根管治療を行ったが咬んだ際に違和感がある。
担当の先生には「次に痛みが出たら抜歯」と言われたが残せるようなら歯を残したい。
レントゲン
根尖病変があり、上顎洞底線も消えかかっています。
*この状態が長く続くと炎症が上顎洞の方へ移行し上顎洞炎になることも
患者さんには根管治療はしてあるが、一度やり直しした方がいいと説明。
前医の先生は痛みの原因をクラックだと患者さんに説明していましたが、
顕微鏡下で治療をしてもクラックはみられませんでしたので、オリジナルの根管を探し掃除を行いました。
穿通の出来たMB根とP根はMTAにて根管充填
レントゲンで見ると、白い線がただただ伸びただけに見えますが、
実はこれが大変、顕微鏡でも見えない部分ですから手の感覚だけで元の神経管を探します。
例えると、広いテーブルの下に落とした1円玉を手の感覚だけで探すようなものです(笑)
ホント手先の感覚だけの治療になるので、そこは専門性が高い歯科医師の方がベターです。
根管治療後に仮歯を入れて経過観察をすることにしました。
術後6ヵ月 痛みなどの症状は一切ないとのこと
根尖病変も治癒傾向が出てきており、上顎洞底線(白い横線)も復活してきております。
奥歯の治療は非常に手間と技術がかかります。
奥歯を残したいのであれば、なるべく顕微鏡下で専門医の治療を受けられた方が残る確率が多少上がります。
前の先生も頑張って治療してくれたとは思いますが、再治療で根の先まで治療をするのは難しいと思います。
先日の顕微鏡歯科学会でも言っていましたが、
今やアメリカの一流歯内療法専門医の根管治療費30万(一般的な歯内療法専門医でも20万以上)
かたや日本の保険診療1万以下
同じ人の歯を治している治療なのにここまで金額に違いが出ると出来る内容にも差は生まれてしまいます。
物価高が叫ばれますが、医療に関しても同じで世界的にみても医療費も例に埋もれず上がっています。
日本の保険診療はホント優秀なシステムだと思いますよ。
ただ、歯科に関していえば理想的な治療は年々出来なくなってきているのも事実です。
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縦に広がる骨吸収(根尖病変) 術後9年経過
- 2024年6月 6日 09:00
- 歯内療法日記
患者さんは40代女性
半年前に大きく腫れ、過去に2回根管治療をしているが今週も腫れてきてその後歯茎から膿が出てきた。
何度も腫れては引くの繰り返しをしているそう。
レントゲン
歯と歯の間に大きな病変が見られます。
このタイプの吸収は珍しい。
抜いてインプラントという手もあるが、その場合かなり骨が無くなるので造骨は必要と思われる。
患者さんには歯を残すのはかなり難しい状態であるが、一度根管治療にチャレンジしてみるか!?と説明
根管治療を4回行い治癒傾向が出てきた所でMTAで根管充填!
この当時は律義に根管充填確認していました。
*今はレントゲンで根管充填材の入りは確認していません。(あまり意味を感じないから)
で、
今週別件で来院されたので、レントゲンを撮らせてもらいました。
「凄い!」の一言
歯槽硬線まで綺麗に復活してくれています!
下に根尖病変が大きなケースはたまにありますが、側面に大きな病変ができているケースはレア
左上1の歯頚部に外部吸収も見られますが、症状や炎症所見もないのでこのままでいいと思います。
*たぶん治療で何とかしようとすると抜歯に繋がる。
個人的には大きな病変があっても、一度根管治療をトライすることをお勧めします。
その方がメリット1上手く行けば歯が残る、メリット2骨が元通りに回復する
抜いた場合、人工の歯を作る必要がある、大きく陥没した骨を作る(GBR)必要がある+歯周外科が必要
たまたま上手くなったケースですが、これだけ骨がしっかり出来てくれていると人の体って凄いな!と思います。
*歯科医師が出来ることは、細菌感染を取ることだけであり感染が収まればあとは勝手に体が治してくれます。
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