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歯内療法日記: 2023年12月アーカイブ
根管治療(外部吸収と側枝)とインプラント
- 2023年12月22日 09:00
- 歯内療法日記
今日が診療最終日となります、1年間ありがとうございました。
今回のケースはちょっと難易度の高いケース
患者さんは60代女性
根尖病変のある歯を抜いてインプラントにしましょうと先生に言われ残せないものか!?と来院
主訴の歯以外の歯の検査もしたいとのことでレントゲンを撮ると
主訴の歯以上に残すのが難しそうな歯が見つかりました。
右上3側面に根尖病変
右上4 根尖に外部吸収様の所見と根尖病変
右上2は過去に抜歯してインプラント
以前も患者さんに
「何で歯医者さんは根に病気があると抜歯を勧めてインプラントなんですか!?」
と質問されましたが、はっきり言えば
「根管治療って歯科の中でもかなり手間のかかって難しい治療で、インプラントの方が治療がシンプルで儲かるから」
根の治療はホント非常に手間がかかります。
患者さんによってはトラブって1年以上治療を続ける人もいます。
「抜歯しかない」と言われ転院 - EE DENTAL_Blog
また日本の保険治療は治療費が安すぎて、そこまで手間をかけれない所もあります。
2回目以降の根管治療は、500円程度で治療費が決められています。
削る道具1本1500円ぐらいする今の歯科界で、治療費の見直しもないままここ20~30年ほぼ同じ治療費です。
歯の価値は1本100万ともいわれますが、100万の車を500円で修理しているようなものです。
これでは車のエンジンオイルも交換出来ません。
だったら、買い替え(抜いてインプラント)でしょ!? という感じです。
でも自分の歯とインプラントは全く別物です。
個人的には自分の歯の方が圧倒的にいいと思います。
今回の患者さんもなるべく自分の歯は残したいという希望で治療をすることに
右上4と右上3はまずは根管治療を行い、経過観察後に外科的歯内療法になる可能性があると説明
まずは右上4
1回法で根管治療+レジンコアまで
XPエンドフィニッシャーで外部吸収部を徹底的に洗浄+切削後にMTA根充
治療2回目 右上4は腫れ痛みは出ていないとのことで右上3も1回法で根管治療+レジンコア+仮歯まで
側面に根尖病変があったのでエディーで徹底的に洗いました。
どうやら側枝(横枝)から細菌が外に出ていたようで、きちんと掃除ができ根管充填材が側枝に綺麗に入っています。
とりあえず半年間は仮歯で生活をしてもらい、病変が治れば外科なし、治らなければ外科的歯内療法で歯の保存を行います。
インプラントが悪いとは思いませんが、日本の根管治療の費用が安すぎる為に難しい歯は抜歯になっている部分もあります。
これは日本の歯科医師が悪いというより、日本の制度上そういったシステムになってしまっています。
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「抜歯しかない」と言われ転院
- 2023年12月20日 09:00
- 歯内療法日記
根管治療は細かい作業の連続で、我々歯科医師が残そうと思っていても、残せない歯というのは一定数あります。
ただ、歯科医師にも得意・不得意分野はあるのでA先生がダメでもB先生なら残せることもあります。
患者さんは50代女性
話を聞くと、歯がかけてしまった為A歯科医院へ
痛みは無かったが、先生に虫歯があると言われ神経を取る治療がスタート
そこから痛みが出てきて、触ると痛い、咬めないぐらい痛い、
1カ月おきに色々な薬を貼薬をするが、毎回治療の度に痛い、
1年間根管治療を続けるも先生に「痛みが落ち着かないのは菌が入っているから」と言われ、治療を続けるも改善がなく、
今度は先生に「もう抜歯してブリッジ、インプラントを行う必要がある」と説明を受ける。
何とか残せないかとB歯科医院に転院し相談すると、EEデンタルへ行った方がいいと先生に言われる。
レントゲンを撮ると、特に根尖病変はない、突き過ぎ(治療し過ぎ)のような気もすると説明
初診から3か月後に連絡があり、一度治療したいと根管治療をスタート
入っていたレジンコア(土台)を削り歯の臭いを嗅ぐと、「ペリオドン」の臭いがしてくる。。。
*アナログではありますが、私は歯の中に入っている人工物の臭いも診断の1つの指標にしています。
また、このパターンか!?
歯の神経を殺すペリオドンの誤った使い方。。。 根管治療 - EE DENTAL_Blog
歯の神経治療は要注意!特に女性!! - EE DENTAL_Blog
過去の経験から、患者さんにはペリオドンによる痛みなら症状が引くまでに結構時間がかかると説明
昔は、根管貼薬(薬の入れ替え)で治すという考え方もありましたが、
残念ですが、難しくしてしまった歯を薬の交換で症状が引かせるのは難しいと思います。
見えなければ、薬に頼り治療をせざるを得ないのですが・・・
私の根管治療は外科の大原則に従い治療を行います。
術野の明示(顕微鏡拡大)を行い ⇒原因の場所を見つける ⇒感染部を除去(削る) ⇒消毒(クリーニング) ⇒層を塞ぐ(根管充填)
*書くと簡単なのですが、実際やるのは大変です(笑)
このケースも何度も根管治療しても治らなかったケース
①隠れた神経管を探し
②0.06mm(#06Kファイル)を通し神経管の先まで道を作る(歯の先までの道筋作り)
③作ったガイドに従い Ni-Tiファイル拡大(②で作った縦道の幅を横に広げ、次の洗浄がしやすい形態にかえる)
④音波を使い徹底的に次亜塩素酸ナトリウムで洗う
⑤根管充填は根の形と根尖の大きさから材料チョイス
結果論ですが、手づかずの神経管が感染源でした。
先生も何とか残そうと色々薬を試して、その中の1つに「ペリオドン」を使われたと思いますが、
半年治療して治せない歯はたぶん1年やっても2年やっても治すことは出来ないと思います。
むしろ、早目に歯内療法専門医に紹介した方が・・・
今回の患者さんのケース
1回目の治療から1か月後の治療2回目
触らなければ痛くはない、なるべく咬まないようにしている。
痛みは前と変わらない。
歯の周りが汚れていたので良く磨くように指導
1回目の治療から3か月後の治療3回目
歯の中は全く汚れていないので、根管充填+レジンコアを作って様子をみることに
*過去の治療で根尖はかなり削られていたのでMTAセメントで根管充填
根管充填から3か月後
触ると響く感じは残っている。触らなければ痛みもなく普通に生活できている。
とのことで仮歯を入れ徐々に上下の当たりを付け咬めるようにしていく。
根管充填から6か月
腫れ痛みはなく、やわらかい物なら食べられる。
かかりつけに戻り本歯を入れてもらおうかと思いましたが、本人が怖くて咬むのを躊躇してしまうと言われるので、もう6か月仮歯で行こうと説明
根管充填から10カ月 仮歯が外れたと来院
この歯で咬み始めたが普通の食事なら出来るようになってきた。
根管充填から1年のレントゲン
腫れ・痛みなどはなく仮歯で普通に食べるとのこと
「OK、OK 上手く治りましたね!」
術後1年で落ち着いてくれたので、この後は紹介先の歯科医院で本歯を作って終了となります。
痛みがない歯の一部がかけたという状態から起こった歯のトラブル
1本の歯に2年半もかかるのは最初の処置・選択が悪かったのかなと私は思います。
自分もミスはしてしまいますが、なるべく痛みのない治療というのは心がけています。
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根と根の間に広がる根尖病変
- 2023年12月12日 09:00
- 歯内療法日記
患者さんは20代女性
セラミックブリッジを入れた歯がよく腫れるとのこと
レントゲンを撮ると
根と根の間に透過像があり、難易度が高そうに見えます。。。
*根の病変の形を見て原因を病態を推測するのですが、この病変の形はレア
患者さんには折れている可能性があること、通常の根管治療後外科的歯内療法が必要になることがあると説明
2回法で治療を行いました。
病変のある近心根はイスムスもあり、その部分を可能な限り清掃&消毒しました。
半年後のレントゲン診査
短期間でだいぶ骨が出来てきてくれています。
ブリッジの支台歯ということもあり、もうしばらく仮歯で生活してもらいセラミックブリッジを入れていきます。
今回のケースは根管治療のみで外科処置なしで行けそうです。
下顎の第一大臼歯は2本の神経管の根管治療がしてあっても、その根と根を繋ぐ溝(0.1mm以下)がありそこにある細い神経管が感染源になっていることがたまにあります。
こういったケースは裸眼では識別できず、適切な処置が難しいことがあります。
第一大臼歯は口の中でもかなり重要な歯なので、この歯の根管治療でトラブった場合はお近くの歯内療法専門医に頼った方が残せる確率が多少上がるかもしれません。
根管治療の成否は、歯の中の細菌をどの程度減らせたかによります。
顕微鏡で細かく細部まで確認&清掃した方が残せる確率が高くなるのは言うまでもありません。
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根尖病変の痛み すぐに取れる場合。取れない場合
- 2023年12月 8日 08:55
- 歯内療法日記
以前書いたブログの続き
膿が酷いので取り除けない難しい状態の歯!? - EE DENTAL_Blog
術前時の大きな根尖病変
以前ブログでも書きましたが、道具が入りずらい側の神経管は手づかずのままのこともあります。
これはある面仕方がないことで、専門性的な道具とテクニックが必要になるので、全ての先生が奥歯をきちんと治療出来る訳ではありません。
今回のケースは、穿通(根の先まで探る)するとそこから排膿(膿)があり、近心根が感染源のようにも思えます。
2回法で根管充填+レジンコアまで
根管充填後はレジンコア(土台)のまましばらく様子を見て行くことにしました。
咬み合わせは殆どないようにしています。
根管充填後も痛みがあり、
術後1カ月:腫れはないが、時々うずく感じが多くなってきている(1日5~6回)
術後6か月:痛みは弱くなってきている、疲れるとたまにうずく
レントゲンでは、術後6か月でだいぶ根尖病変は小さくなり骨も出来てきてくれています。
術後8ヵ月:たまにうずく感じが疲れた時に出る3日に1回ぐらい
術後9か月:たまに顎からエラに痛みが出る
術後1年1カ月:腫れと痛みが肩コリと同時に出る、肩こりが落ち着くと痛みは無くなる
レントゲン
特に気になる病変はありません。(たぶん術後1年なのでCBCTで診査すればまだまだ透過像はあるかもしれません)
今週、術後2年のレントゲンを撮らせてもらいました。
患者さんに「痛みと腫れは!?」と聞くと
「ないですよ!」
と、痛みを主張してきていた患者さんが痛み・違和感なく生活できています。
このように術後多少の痛み・違和感があってもしばらく経過を見ることで痛みが引く場合があります。
条件は治療した歯が、①腫れてこない、②膿が出ない、③レントゲンで6~12か月後に治癒傾向がある
ここ10年以上この基準でやっています。
患者さんが知っておいた方がいいのは、
①細菌感染による痛み
②脳が作り出している痛み
の2つに分かれます。
①は治療である部分解決できます。
②は精神的な痛みなので、気にしないことを心がけてもらいます。(治療をしても痛み方が変わらない人は指定するペインクリニック(井川先生)に行ってもらっています。)
後、私の経験則ですが、
術前時に症状が長く出ていた歯ほど、症状が落ち着くまでに時間はかかります。
以上、根管治療後の「痛み」の話でした。
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サンメディカル系の根管治療材
- 2023年12月 5日 09:02
- 歯内療法日記
先に、今回の内容はサンメディカル材料大好き先生を敵に回すような内容です(笑)
歯科治療は色々な材料があり、何を使うかは先生の好みによる部分が大きいです。
基本的に私はメリットよりある程度デメリットを重視する派です。
歯科治療は誰が治療を行っても必ずやり替えの時期が来るので、特に再治療の際に困らないような選択をします。
すると、
①強度・接着力ばかりに気を使わない(実験室の環境と実際の臨床は大きく異なります)
②特殊な材料ではなく極々一般的な材料で次の先生が見た時も判断がしやすい(マイナーでない)
③操作性がよく、10年ぐらいは問題が起こらない材料(永久材料など存在しない)
という感じです。
私的には、
自分のやった処置は完璧だから再治療のことなど考えない材料選択
というのは、「待て待て!」と突っ込みたくなります(笑)
今回のケースは、私の苦手メーカーの材料を使われていたケース
世界一を誇るほど強力な接着剤を開発しているサンメディカル社
日本の接着マニアな先生が好んで使うのですが、これが超厄介!
患者さんは50代女性
左下の奥歯が腫れて来たとのことで来院
根の先に透過像(膿)が見られます。
根管治療も遠心根にうっすら根管充填材が見られますが、近心根は何も手が入っていない。
患者さんが初めて来院した2020年時には病変がなかったのそのままにしておいた歯なのですが、正直手を入れたくなかった歯
理由は反対側の歯の治療がメチャクチャ大変だったから
歯質ペラペラになるまで削らており、ジルコニアクラウンはスーパーボンドで固められ、
その下のコアから根充剤全てサンメディカル系材料で治療がしてありました。
サンメディカルの材料はネチャネチャ残りガッタパーチャーのように溶かして除去しにくい!
ですので、患者さんにはたぶん同じ先生の治療なので反対側は再治療が大変とは伝えてありました。
が、今回腫れの原因である根尖病変ができてしまった為、右下7も治療を行うことに
ジルコニアクラウン除去後に出てくるレジンコア
イメージ的に白い部分はネチャネチャ系のレジン(灰色をしていました)
基本的に私はレジンコアに関しては無注水で水をかけずに切削するのですが、
このネチャネチャするレジンは水をかけながら除去しないと、削る道具に材料がまとわり付く
しかもこの歯、かなり下の方(根分岐部)まで削ってあり、注水しながらだと必要以上に削ってしまい歯に穴を開けるリスクが高い・・・
30~40分ぐらいかけチマチマレジンコアを除去
すると、全くの手付かずの近心根がない!
そして何となく感じる違和感・・・
切削する道具を超音波に代え、怪しい部分をピンポイントで削ると、またネチョっとレジンっぽい物が削れる。。。
「はぁ!?」
「これって、スーパーボンドじゃん!」
たぶん前の先生は近心根の根管口が分からずこちら側だけ透明のスーパーボンドを流して蓋をしたみたい・・・
図にすると
図の青い部分に透明のスーパーボンドが入っており、まさにトリック!
レントゲンで見る分には2種類のレジンが入っていると推測も出来ません。
ぶっちゃけ、顕微鏡があったから分かったようなもので
裸眼では2000%識別できない罠!
内心、「わざわざ土台の色変えんなや!」と心の中で突っ込みました(笑)
またこのケースも女性で開口量が少なかったので、患者さんに頑張って大きく開いてもらい
その隙に近心の2根を探し無事3根管に根管充填+レジンコア
近心根は入り口を見つけ0.1mmのオープナーで突き、#08Kファイルでターン&プルで少しずつオリジナルの根管を根尖まで見つけ、レシプロでガイドを大きくしてニッケルチタン(セミナーでやっていることそのままです)
なんとか綺麗に根管治療が終わりました。
かくいう私も若い頃は材料選びはもの凄くこだわっていました。(特に根管充填材)
が、ある時に講演後の林先生に「先生は頭の中が根充剤で一杯 そうではないんだよ!」と臨床の基本となるべき部分を教えてもらいました。
また林先生もサンメディカル系の先生ですが、そういった所を理解して材料を選ぶことはホントの重要だなとこの年にして思います。
材料にこだわるのは悪くはないと思いますが、特殊な材料を用いたからといって成功率が飛躍的に上がる訳ではありませんし、根管治療なら虫歯をきちんと取る、隔壁をする、ラバーダムをするなど材料選択前にやるべき点は色々あります。
個人的には世界のトレンドにも入らないサンメディカル系の根管治療材料は再治療しにくいのでわざわざ使わない方がいいと感じます。(特別優れた材料なら世界の歯内療法専門医も使うはずです)
成功率が100%の先生なら再治療も必要ありませんが、そんな先生この世の中にはまずいないと個人的には思います。
*あくまでも個人の感想ですので(笑)
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大きなパフォレーションとMTAセメント
- 2023年12月 1日 09:05
- 歯内療法日記
患者さんは30代男性
全体的に治したいとの主訴でした。
その中の左上4
痛みは無いが前々から歯茎から膿が出る。
太いメタルポストが入っており、歯の側面に大きな透過像(膿)が見られます。
患者さんには、
1、歯が折れている
2、神経の横枝に感染がある
3、前の治療で歯の側面に穴を開けてしまったパフォレーションがある
のどれかだと思います。
一度残す方向で治療しましょうということで治療をさせてもらうと
治療後
太いメタルポストを作る際でしょうか、歯に穴を開けてしまいそこからの感染でした。
*2か所パフォレーションがありました。
仮歯を入れ経過観察
治療後から膿もとまり、痛みなども無いそう。
大きな病変はだいぶ小さくなってくれていますが、外に出たMTAを囲むように透過像があります。
患者さんは普通に食事もでき、症状もないことよりもうしばらく仮歯で経過を見ることに
術後2年 仮歯が外れたとのことで来院
1年前と変わりなし、患者さんの症状は一切なし
と言うことで、この透過像は歯の外に出てしまったMTAが起こしている透過像と推測
*MTAセメントは生態親和性が高いと言われる材料ですが、体にとっては異物なのでこのような反応を起こす場合も多々ありますが、細菌感染を起こしている訳ではないので問題なく経過します。
患者さんに説明を行いセラミッククラウンを入れることにしました。
綺麗に適合しております。
術前時には残せるか!?と思った歯でしたがなんとか残すことができました!
先日、ある先生に巨匠のT先生が、
外に出たMTAはセメント質が添加され歯根が伸びると言っていたのですが、どう思いますか!?
と聞かれましたが、
個人的には私の場合外に出たMTAは大量に出た場合は今回のような、外に出たMTA部分だけ透過像が残ります。(異物反応のような所見)
たぶん今回のケースは、このまま経過していくと思われますがまず問題は起こらないだろうと推測しています。
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