「抜歯しかない」と言われ転院
- 2023年12月20日 09:00
- 歯内療法日記
根管治療は細かい作業の連続で、我々歯科医師が残そうと思っていても、残せない歯というのは一定数あります。
ただ、歯科医師にも得意・不得意分野はあるのでA先生がダメでもB先生なら残せることもあります。
患者さんは50代女性
話を聞くと、歯がかけてしまった為A歯科医院へ
痛みは無かったが、先生に虫歯があると言われ神経を取る治療がスタート
そこから痛みが出てきて、触ると痛い、咬めないぐらい痛い、
1カ月おきに色々な薬を貼薬をするが、毎回治療の度に痛い、
1年間根管治療を続けるも先生に「痛みが落ち着かないのは菌が入っているから」と言われ、治療を続けるも改善がなく、
今度は先生に「もう抜歯してブリッジ、インプラントを行う必要がある」と説明を受ける。
何とか残せないかとB歯科医院に転院し相談すると、EEデンタルへ行った方がいいと先生に言われる。
レントゲンを撮ると、特に根尖病変はない、突き過ぎ(治療し過ぎ)のような気もすると説明
初診から3か月後に連絡があり、一度治療したいと根管治療をスタート
入っていたレジンコア(土台)を削り歯の臭いを嗅ぐと、「ペリオドン」の臭いがしてくる。。。
*アナログではありますが、私は歯の中に入っている人工物の臭いも診断の1つの指標にしています。
また、このパターンか!?
歯の神経を殺すペリオドンの誤った使い方。。。 根管治療 - EE DENTAL_Blog
歯の神経治療は要注意!特に女性!! - EE DENTAL_Blog
過去の経験から、患者さんにはペリオドンによる痛みなら症状が引くまでに結構時間がかかると説明
昔は、根管貼薬(薬の入れ替え)で治すという考え方もありましたが、
残念ですが、難しくしてしまった歯を薬の交換で症状が引かせるのは難しいと思います。
見えなければ、薬に頼り治療をせざるを得ないのですが・・・
私の根管治療は外科の大原則に従い治療を行います。
術野の明示(顕微鏡拡大)を行い ⇒原因の場所を見つける ⇒感染部を除去(削る) ⇒消毒(クリーニング) ⇒層を塞ぐ(根管充填)
*書くと簡単なのですが、実際やるのは大変です(笑)
このケースも何度も根管治療しても治らなかったケース
①隠れた神経管を探し
②0.06mm(#06Kファイル)を通し神経管の先まで道を作る(歯の先までの道筋作り)
③作ったガイドに従い Ni-Tiファイル拡大(②で作った縦道の幅を横に広げ、次の洗浄がしやすい形態にかえる)
④音波を使い徹底的に次亜塩素酸ナトリウムで洗う
⑤根管充填は根の形と根尖の大きさから材料チョイス
結果論ですが、手づかずの神経管が感染源でした。
先生も何とか残そうと色々薬を試して、その中の1つに「ペリオドン」を使われたと思いますが、
半年治療して治せない歯はたぶん1年やっても2年やっても治すことは出来ないと思います。
むしろ、早目に歯内療法専門医に紹介した方が・・・
今回の患者さんのケース
1回目の治療から1か月後の治療2回目
触らなければ痛くはない、なるべく咬まないようにしている。
痛みは前と変わらない。
歯の周りが汚れていたので良く磨くように指導
1回目の治療から3か月後の治療3回目
歯の中は全く汚れていないので、根管充填+レジンコアを作って様子をみることに
*過去の治療で根尖はかなり削られていたのでMTAセメントで根管充填
根管充填から3か月後
触ると響く感じは残っている。触らなければ痛みもなく普通に生活できている。
とのことで仮歯を入れ徐々に上下の当たりを付け咬めるようにしていく。
根管充填から6か月
腫れ痛みはなく、やわらかい物なら食べられる。
かかりつけに戻り本歯を入れてもらおうかと思いましたが、本人が怖くて咬むのを躊躇してしまうと言われるので、もう6か月仮歯で行こうと説明
根管充填から10カ月 仮歯が外れたと来院
この歯で咬み始めたが普通の食事なら出来るようになってきた。
根管充填から1年のレントゲン
腫れ・痛みなどはなく仮歯で普通に食べるとのこと
「OK、OK 上手く治りましたね!」
術後1年で落ち着いてくれたので、この後は紹介先の歯科医院で本歯を作って終了となります。
痛みがない歯の一部がかけたという状態から起こった歯のトラブル
1本の歯に2年半もかかるのは最初の処置・選択が悪かったのかなと私は思います。
自分もミスはしてしまいますが、なるべく痛みのない治療というのは心がけています。
- 購読
- Powerd By