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歯内療法日記: 2021年9月アーカイブ
レントゲン、CBCTでは分からない根管治療の問題
- 2021年9月25日 09:15
- 歯内療法日記
患者さんの中にはレントゲンを撮ると、悪い場所が明確に分かると考えられている方もおられますが、
これは違います。
治療前には歯根破折は分かりません・・・ - EE DENTAL_Blog
レントゲンもCBCTも白黒画像でそこから術者がそれを読み取り、
経験値から推測し、疑いをかけるものになります。
つまり、レントゲンの読影というものは経験値がものをいう診断法になります。
今回の患者さんのケースは術中に痛みの原因が分かったケース
患者さんは50代女性
2019年に来院され、悪い場所など一通り治したのですが、
2021年に入り咬むと激痛が3日続いており、その後鈍痛が続くとのことで来院してもらうと
特に悪い所見もなく・・・
分からない時はCBCTという流れで、CTまで撮らせてもらいましたが・・・
分からない!
基本私は当てずっぽうな推測治療はしたくない為、今回は抗生剤で散らし
待機診断を行うことにしました。
が、2週後にもまた痛みがでてしまい、その際に左上の奥2本が痛かったとのこと
それを聞き総合的に考えると、左上6が怪しい
*口の中の所見やレントゲンも見ますが、患者さんの痛みの種類・表現も診断の参考になります。
患者さんの了解を得て、治療をスタートすると、
太いゴールドコア(土台)除去後に、口蓋根にパフォレーション(パフォ)。。。
*パフォレーション:過去の根管治療による歯の穴←これを適切に埋めないと腫れと痛みは引きません。
私は患者さんに、
「レントゲンは金属の濃淡を示しているもので、金属の濃度が濃いほど白く映り逆に黒い部分は「口の中」など金属がない所、歯も骨もカルシュームという金属で構成されているのでレントゲンでは灰色に映ってきます。」
とレントゲンのざっくりした見方を教えます。
骨の灰色部分が黒くなると骨(Ca)が逃げて行っている証拠で、そこに炎症つまり感染があります。
レントゲン診断は黒い部分を探し疑いをかけるものです。
ただ今回は、
穴の部分が金属で隠されています。
*金属濃度が高い部分しか診断できません。
この部分を顕微鏡で見つけて、穴埋め!
穴を埋める前にこの太く長い金属の土台をどう除去するか!?
したか!?
答えは、超音波でポストを揺らし安全に除去できます。
(大体7割は)
見えていない手探りの治療ではどうしても起こってしまう医原性の問題です。
今週も似たようなパフォレーションリペアを行いましたが、顕微鏡治療をしている人間からすると、
拡大視野で治療を行えばこんなエラー(パフォ)起こらないのに。。。 とも思います。
根尖病変は無い為、開けれる場所まで治療を行い根管充填
仮歯で生活をしてもらい経過観察
7か月後、症状もなく順調に経過しているとのこと
コスト的に難しい問題かもしれませんが、
少なくとも現代の歯科治療は必ず拡大視野で治療すべき分野だと個人的には思います。
ただ、私自身顕微鏡を覗きっ放しで集中力を絶えず維持する診療は、1日に3~4人が限界の歳になりました。
精密な治療というか手間のかける治療って量産できないんですよ(>。<)
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【歯内療法専門医】特別な薬剤を使わない根管治療
- 2021年9月24日 09:08
- 歯内療法日記
患者さんは60代の女性
2年前にクラウンを入れた、その後ホワイトニングをしたら左下に
痛みが出てきた為、左下の神経の治療が必要とのことで抜髄を行った。
その後一旦は痛みが治まったので1年前にクラウンを入れたが、
入れたとたん痛みがぶり返してきてしまい、嚙むことも出来なかった。
2020年12月から再根管治療を行い始めたが、そこから痛みが常に続いている
2021年5月にB歯科医院に転院し根管治療を続けるも痛い。
その後、浜松のF歯科医院に転院し先生に
「僕でも治療できるけど、一度歯内療法専門医のEEデンタルで診てもらった方がいい」
とのことで、EEデンタルへ
来院時の症状は、
何かに突かれている感じがあり、夜になると顎の方まで脈打つように痛みがある。
指で押さえると痛い、今は特に常に痛い、痛みで寝れない。
とのことで痛みにかなり悩んでいるよう
レントゲンを撮ると
2回目の根管充填がしてあり、特に大きな病変もない
痛みが大きく、治療期間も長い為「非原性歯痛の疑い」もあることを説明
治療方針としては、現在の状態だと隔壁に隙間がありそこから感染している恐れがある為、
まず菌が入らないような環境下で治療を行い
半年治療しても改善がない場合、神経系の科で薬で治してもらう必要があることを説明
患者さんの了承を得て治療スタート
1回目の治療で隔壁をやり直し、中のGPを除去後
根の先が大きく削られているのを確認後、徹底的に次亜塩素酸ナトリウムで洗浄
次の治療は1か月後にインタビューのみで歯は触らないことを説明
1か月後のインタビュー
「治療後2日目から痛みは治まり、普通にしていると今は痛みはない」
「よく寝れており、かなり改善してきているとのこと」
「ただ、咬むと痛い」←咬まないように指示
*根管治療中の歯では咬まない方がいいです。
じゃあ、また1か月後にきてもらい「更に痛みが引いていれば最終的な薬を詰めます」
と説明
更に1か月後
「夜の痛みもなくなり、左の顎全体が痛かった痛みも無くなった」
「指で押さえると多少の違和感」←これも止めるように指示
*気になると、指や舌で触りがちですが、これも不要の刺激を与えていることになるので止めてください。
改善傾向がある為、根充して、土台+仮歯で様子を見ていくことに
根の先が#60ぐらいまで削られていたのでMTAをチョイス!
綺麗にMTAが入っています。
この後、半年後にレントゲンを撮ってクラウンを製作する予定です。
あれだけ痛みに困っていた患者さんなので、1回の治療で劇的に改善したことで
【先生は何か特殊な治療や薬剤を使用しているんですか!?】と質問されましたが、
『いや、スタンダードな治療のみですね、たぶん、Aさんの場合頻繁に治療し過ぎですね』
『治したいからと言って、頻繁に傷口消毒と称して針で傷口を刺激を与えていてはそら体も治りませんよ』
『私がやったのはキッチンハイターのような消毒剤で幹部を消毒して、体の治そうとする力を利用しただけ』
と説明
患者さんは凄く不思議がっていましたが、私が行うのはどの患者さんも同じスタンダード(標準)治療
逆にこの方法で治療を行い6か月経過しても痛みの改善が全くない場合は「歯の治療だけでは痛みは取れない」
と判断します。
歯科治療って、ホントに色々な治療法や薬剤がでてきますが、結局その多くが眉唾というか
特殊な薬・方法で治るケースは、スタンダードな治療法でも治る気がします。
*スタンダードな治療とはモンダンエンドで、日本古来の旧式根管治療法とは異なります。
痛みに困ると、ネットで藁をもすがる思いで特殊な治療法に期待をしてしまいますが・・・
殆ど宗教と同じような非科学的な世界に入って行きます。
帰りがけに患者さんに
「私は、ここの歯科医院を教えてもらえてホント幸せだった」
とおっしゃられて非常に嬉しそうに帰られました。
ただ、今回のケースはたまたま治っただけで、痛みが治る患者さんもおられますし、
痛みが取れずペインクリニックに行ってもらう患者さんもおられます。
特殊な治療法を選ぶより、まずはスタンダードな治療を行う歯内療法専門医に根管治療のトラブルは頼った方がいいと思いますよ( ̄ ̄▽ ̄ ̄)
以上、たまたま痛みが短期間で取れたケースでした。
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大きな虫歯の予後が悪い場合
基本私は虫歯や過去の詰め物が大きくても神経を残す方向では治療を行います。
ただ、神経付近まで削った歯や過去に大きく削ってあった歯というのは
イメージ的に20本に1本ぐらいの割合で、術後症状が出てしまい
神経が死んでしまうことがあります。
ですから、虫歯の大きかった歯などの治療後には患者さんに
「持続する大き目の痛み」「温かいものを食べた後に痛みが持続する」場合は
今回の治療が間違えていると体が教えてくれているので、神経を取る処置が必要となる場合があるのでEEデンタルまで連絡してください。
とお話しています。
今回の患者さん
40代女性 虫歯の治療を希望
最近多い、縁下深い部分まで削ってあるインレー・・・
こんな部分に虫歯など無かったと思うのですが。。。
見えなくて勘だけで削る治療をするとこうなってしまいます。
保険治療であれば仕方がないとは思いますが、再治療する側としてはホントこれ勘弁してもらいたい。。。
治療後3カ月
痛んできたと来院され、診査すると神経が死んでしまっていました。
この歯は治療前から多少揺れがあり、気になってはいたのですが・・・
電気を流しても生活反応が無い為、神経の治療を行うことにしました。
詰めたレジンに2mm程度の穴を開け根管治療
根管治療+レジン充填後
なるべく神経を残す方向では治療を行いますが、
どうしても術後に痛みが出てしまい、神経が死んでしまう歯は存在します。
逆に言えば虫歯が大きくても残せる神経も多く存在します。
虫歯が大きかった患者さんにはその都度、痛みが出たら神経の治療が必要になることを説明させて頂きます。
神経の保存は難しい。。。(>。<)
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全顎治療
患者さんは30代男性
プラスチック治療(レジン):10本
歯内療法:3本
フルジルコニアクラウン:3本
主訴であった左下7
親知らずの影響で歯茎の中から大きな虫歯が出来てしまい神経が死んでしまっていました。
何とか保存の方が出来ました!
なるべく悪くならないように毎日の歯磨き頑張ってくださいね!(・∀・)
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根管治療でMTA根管充填することについて
- 2021年9月 3日 09:02
- 歯内療法日記
歯内療法学会もMTAで根管充填する際の同意書の雛形を発行していましたが、
MTAで根管充填することが多くなり、それによってトラブルも増えてきているんでしょうね。
一応、EEデンタルでは根管治療前の資料の中に
「MTAセメントで根管充填(最終的な詰め物)を行うことに関して」
という紙を入れておりますので一度目を通してください。
また、資料を作っていない先生向けにEEデンタルの資料をオープンにしておきますので
参考にしてみてください。
以下、説明文
1990年代に入り、歯内療法はいくつもの大きな革新的な技術・道具・材料が生まれました。
その1つに「MTAセメント」があります。また特許が切れた為、世界中で多くのジェネリックMTAがでてきています。(世界中でこれほど売れ、治療基準を変えてしまった商品はないでしょう)
MTAという材料は、直接覆髄材、パフォレーションリペア材、根管充填材、逆根管充填材、内部・外部吸収材と色々な用途があり、歯内療法の世界ではなくてはならない材料の1つです。
私が尊敬するペンシルバニア大学のDr Martin Tropeは
『現在の歯内療法の弱点は、根管充填にガッタパーチャー(ピンク色のゴム)を使用すること』
と話されています。
*根管充填:歯の神経を取った部分に人工材料を詰めること
根管治療の最後に「薬」と称して使う材料は100年以上前からガッタパーチャーというゴムを使用していますが、このガッタパーチャーは非常に欠点が多く、
・経時的に劣化、吸収する(収縮する)
・歯と接着性がない(細菌侵入が容易)
・薬効がなく(細菌を殺す力がない)、ガッタパーチャー自体も滅菌できない
・細菌繁殖の足場になる(ゴム自体が細菌に感染され汚染物質となる)
・根の先から出ると異物反応を示すことがある などが挙げられます。
唯一のメリットは、再治療時に「除去できる(溶かせる)」という点です。
昔、私も大学では最終的に詰める材料はガッタパーチャーのみになると教わっていましたが、
専門医の間では、特にやり直しの再根管治療ではMTAセメントを使う傾向が高くなっています。
私は2007年の開業時から症例を選んでMTAセメントで根管充填を行っていますが、
根の先が破壊されたケースなどは明らかにガッタパーチャーより成績が良い感触があります
ただ、MTAセメントにも欠点があり、
・一度固まると除去できない (将来的には除去できるMTA製品も出てくるとは思います)
・歯がグレーに変色することがある(変色の少ないジェネリックMTAも出てきています)
よって、MTAで根管充填を行うと再根管治療が出来ないので次は外科的歯内療法での治療となります。
海外の歯内療法専門医の教科書では当たり前のようにMTAセメントで根管充填という記述があるのに対して日本では薬事法の関係で根管充填材としては認可されていません。
安全性に関しては動物実験などで1990年代にクリアーされておりますが、こと日本の歯科治療は20年近く遅れを取っており未だに歯科医師の判断の元の使用となっております。
もしMTAセメントが根充剤として使えないとなると、世界の歯内療法専門医は成功率が下がってしまい、保存できる歯も抜歯となり非常に困ってしまうほどの、今の所変わりがない材料です。
当院でも症例を選んでMTAセメントを使わせて頂くことがあることをご了承ください。
歯内療法専門医 井野泰伸
以上がお渡ししている資料になります。
例えば、MTAを使用できなければ抜歯になっていた8歳の女の子のケースです、
虫歯治療後に腫れてきた根未完成歯の根管治療 - EE DENTAL_Blog
このようにひと昔前であれば助けれなかった歯もMTAの登場で保存可能な時代になりました。
毎年データーを取っていますが、
EEデンタルのMTA根管充填率はおおよそ6割弱となります。
EEデンタル2020年 歯内療法専門医 根管治療傾向 - EE DENTAL_Blog
その多くは感染根管治療でやり直しの根管治療の場合です。
成人の歯で初めての神経の治療の抜髄でMTAで根管充填を行うことは殆どありません。
因みに、日本はMTAを根管充填材として扱っていないのは薬事法の関係です。
MTAを国内で販売しようとした時にどんな治療薬として登録するか!?
直接覆髄材、パフォレーションリペア材、根管充填材、逆根管充填材、内部・外部吸収材
結論的に言えば、MTAを覆髄材で登録した方が、国内の認可が下りるのが早く
逆にMTAを根管充填材として販売しようとすると、多くの時間、費用と労力が掛かる為
メーカーはMTAを国内で販売さえできればいいので、認可のハードルの低い覆髄材として登録をしています。
これは私の推測ですが、
またメーカーは訴訟リスクなどの観点から、適応症を大きくするよりは適応症を小さくし
根管充填に使用され問題が起こった場合は、歯科医師の責任の元ということで企業は
訴訟リスクを回避する為に今も販売元は根管充填材という取り扱いをしておりません。
*当たり前といえば当たり前で私が企業のトップでも同じアクションをします。
MTAの使用が絶対嫌!という患者さんもおられると思います。
もしMTAの使用を控えたいという患者さんは事前にお申し出ください。
ただ、個人的な肌感覚では以前の治療で大きく削られた歯などはMTAを使用した方が治癒率は高いと思います。
またパフォレーションのリペア材料も現在ほぼMTA1択でこれを使わなければ上手くいきません。
*出来る範囲で治療は行いますが、成功率は低くなるとご理解ください。
後、個人的な意見では、MTAでの根管充填はできるだけ専門性の高い歯科医師で外科的歯内療法
が出来る歯科医師がいいと思います。
先日もMTAで根管充填を行い、上手く行かず「抜歯しかない」と言われ相談に来られた患者さんがおられましたが、MTA根充する歯科医師はせめて外科的歯内療法が出来ないと使用するべきではないと考えております。
以上、普及しつつあるMTA根管充填についてでした( ・∀・)ノ
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