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暫間的間接覆髄(AIPC:非侵襲性歯髄覆罩)
- 2021年9月17日 09:02
- マニアックレジン
今回は最近セミナーの質疑応答での質問で多い歯髄保存ネタ
歯髄保存に関しては昔から色々やってきました。
今では知られたMTAによる直接覆髄法のHPなどを最初に作ったのは、
EEデンタルではないかなとも思っています。
(開業当時、歯髄保存なんて自費で扱う治療ではありませんでしたし、歯髄保存自体マニアックな先生が好んでする治療の代表格でした)
ただ、自分の中でもトレンドがあり、色々聞いて勉強していくと
歯の神経を取らない為の『歯髄』の勉強 - EE DENTAL_Blog
直接覆髄前に出来ることが色々あり、今は大きな虫歯で最初に治療が出来る場合は
『間接覆髄法』がメインになっています。
極端な話、虫歯というのは全て取っている訳ではなく
術者がこれは大丈夫だろうという曖昧な基準の元治療は行われています。
専門的な話をすると虫歯は6層に分類され
上から下(神経付近)に向かい
「多菌(たきん)層」
「寡菌(かきん)層」
「先駆菌層」 ←ここまで除去する必要あり
「混濁層」 ←これより下は残しても大丈夫!?
「透明層」
「生活反応層」
と別れ、教科書的には混濁層付近から下は残してもよいとされています。
ただ、これは机上の空論でどの部分が〇〇層など分かって削っている訳ではありません。。。
しいて言うと、う蝕検知液は混濁層付近から染まらないというものです。
だから、1つの指標として「う蝕検知液」は使うべきなのですが・・・
ただ、これも万能ではなく「えっ、ホントに!?」と思うことがあります。
どうみても歯が柔らかく、これ虫歯でしょ!?という部分も染まらないこともあります。
つまり虫歯の除去は術者の匙加減な訳です。
私も昔はかなり積極的に神経付近の虫歯の除去を行っており、その為露髄(神経が出る)
⇒MTAで直接覆髄という構図でしたが、
経験を重ねると、どうしても神経付近まで削った歯の予後は短期、中期で見た時に悪く
何とか神経を残す方法はないかと試行錯誤してきました。
自分の中で今と昔で大きく異なるのが、歯髄付近の虫歯の取り扱い
このまま削ると「露髄しそうだな・・・」と思う場合は
虫歯を多少残したまま行い「シールドレストレーション」、「AIPC」を選択することが多くなりました。
*直接覆髄も行いますが、頻度は減っています。
先に言っておきますが、顕微鏡下で慎重に行う、
裸眼でう蝕検知液も使わず行う「シールドレストレーション」、「AIPC」とは別物と思ってください。
何故か!?
覆髄系(神経保護)治療の成功へのポイントは緊密な封鎖です。
講演でも話しましたが、覆髄系の治療は「どら焼き理論」で中のあんこがはみ出ないように完全に封鎖する必要があります。
つまり神経付近の虫歯以外は徹底的なカリエス除去と即日の接着封鎖が肝です。
今回の患者さんは40代男性
レジンが詰めてあったのですが、明かに下に大きな虫歯が残っていました。
術前の白い所がレジン、虫歯が予想していたより大きく露髄が怖く途中でレントゲンを撮った所が術中
黒い扇肩の部分が虫歯だった所
これ以上虫歯の除去を行うと、露髄しそうなのでAIPCを行いました。
AIPCはタンニンという薬剤の力で柔い虫歯部分を固い歯(修復象牙質)に替えるという方法です。
AIPC後レントゲンで経過を見ていき、リエントリーの時期を探りました。
保存学会のガイドラインでは3~6か月で修復象牙質が出来るとあるのですが、
個人的には過去半年でリエントリーしたら、露髄させてしまった経験があるので、
1年は待つようにしてレントゲンで神経が死んでいないかだけチェック
今回の患者さんは他の部位のインプラント治療もあった為、
インプラント治療がひと段落したタイミングでのリエントリーを予定しました。
リエントリー時
非常に硬い修復象牙質に代わってくれています!
レジン充填
レントゲン
綺麗に治療出来ていると思います。
巷では、神経を残す為に色々な薬剤、器材が存在します。
私が歯科医師になって、そのような商品がいくら出たでしょう!?
ただ、その多くは流れ星のように無くなります。
つまりまがい物で本物ではないということです。
歯科の原則はいたってシンプル、「削って詰める」
そこに薬剤の力を借りるか!?になりますが、個人的には薬剤の力というのは
間接的な副因子であり、成功の為の大きな因子は未来も大きくは変わってこないと思います。
日本の場合、保険治療の治療費が安すぎる為、海外から自費治療の名目化の為に
色々薬剤が入ってきていますが、薬剤を使ったから特別成功率が上がるとは思えません。
またネット検索される患者さんもまんまと疑わしいHPのうたい文句と最新器材に踊らされている気がします。
今回AIPCで使用した薬剤も保険治療で認可されている非常に安い材料です。
以前も書きましたが、人間の体のルールは未来永劫大きく変わりません。
つまり、原理原則、ルール、法則を知ろうとしている歯科医師の治療の方が予知性は高い気がします。
以上、歯髄保存の今の勘所でした。
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