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歯の神経を取らない為の『歯髄』の勉強

週末、珍しく岐阜駅の方へ行ってきました。

(岐阜はホスダル以来ですね。 http://eedental.jp/ee_diary/2012/03/post-480.html )

 

 

今回の講演は『象牙質・歯髄複合体』のテーマで、その道の第一人者の興地教授の話でした。

DSC00136.jpg 

また、臨床的にはレジンと歯内療法の中間の話でしたので、この2つを主に治療を行っている私には非常に勉強になりました。

 

歯髄の診断というのは非常に難しく、神経を残すのか?神経をとるのか?と言うのは術者の知識・経験に大きく依存するものです。

また神経を残した場合、その後の細胞の活動や痛みが出た際に神経内で起こっている細胞の現象など見えない部分で何が起こっているのか理解しておくのも大切なことだと思います。

 

 

今回の俺ノート

・根管治療を行った歯の8年経過後の生存率:97% (n=1,462,936)

 salehrabi&Rotstein J Endod 2004

(生存率とは口の中に歯があるかの判断です、病変があっても口の中にあれば成功とカウントしています)

結局、インプラントの成功率も殆ど生存率で見ているので、根管治療した歯でも多くの場合で口の中に残っていることになります。

 

 

・歯髄診断

患者さんの痛みの種類、感じ方によって診断を下し病名を付けるが、痛みと病理所見は一致しない。

痛みの有無と歯髄の健康状態は一致しない (Seltzer et al 1963)

ここなんですよね、痛みがあっても神経を取らなくていい場合もありますし、痛みが無くても神経を取らなくてはいけない時もある。

50年前からこの分野の優れた診断ツールは出ていないんですね・・・  開発を希望します!

 

 

・歯髄に対する刺激

1、切削刺激

2、充填材料による刺激

3、マイクロリケージ(削った面の象牙細管から細菌感染)←ここに大きな問題があるのでは!?

興地教授も可能なら間接法より直接法で象牙質をなるべく汚染させない方がいいと言っていましたね。

私も唾液感染が避けれない間接法より、その日のうちに象牙質を封鎖してしまう直接法の方がいいと思っています。(だからレジンなんですよ(笑))

 

 

・遊離エナメル質の積極的な除去は不要(現在教科書にもこう書いてあるそうです)

私が大学で習ったのは遊離エナメルは弱いそうなので削って取りなさいと教育されました。

 

 

・1液性のボンディング剤はドレッシングと同じで、分離しているものもあるので使う前によくふる。

 

 

・レジンの光の当て方:LowからHigtのように最初は「弱」途中から「強く」

 (レジンの収縮補正)

 

 

・電気歯髄診断 神経のAβ繊維が反応してC繊維は反応しない

また、結構ノイズの多い検査法であり、これだけでの診断は危険! 歯質の厚みにもより偽陰性が出るそうです。

 

 

・非定型歯痛 歯内療法が行われた歯の3~6%に出現 40代女性、上顎臼歯部に好発 

Melis et al 2003

 ロンドンなどでは12%との報告もあるが、興地教授曰く都会の方が出現率が高いのではないかと話されていました。

(私も思いますが、都会ほどストレスはかかりますし、精神的にも疲れる環境にある為ではないでしょうか!?)

 

 
・シールドレストレーション(虫歯を取り残したまま緊密な充填を行い細菌を生き埋め状態にする)でう蝕は進行停止する。
Maltz et al 2002  、 Oliverira et al 2006 

 

 

・「暫間的間接覆髄(AIPC)」と『シールドレストレーショ』 成功率が高いのは『シールドレストレーション』

興地教授の話ではこの理由は、AIPCを行っても2回目のリエントリーに来院がない患者さんがいるの成功率が下がるそうです(笑)

まぁ、3か月後に来てと言っても症状無くなっていれば患者さんの来院は1/3はないですわね。

注意:暫間的間接覆髄法、IPC法(Indirect Pulp Capping)、非侵襲性歯髄覆罩法(AIPC)、stepwise excavation(段階的感染歯質除去)全て同じような意味だそうです。 

 

 

・暫間的間接覆髄と虫歯を1回で全て除去する方法 での歯髄保存

1年予後での成功率 暫間的間接覆髄 74.1% 一括除去 62.4% 

Bjorndal et al. Eur J Oral Sci 118: 290-297 .2010

 

 

・レジン充填の際の間接覆髄剤(水酸化Ca)は不要

(水酸化Caの種類によっては将来死腔ができるとも聞いたことがあります)

 

 

・直接覆髄法の隠れた目的は歯髄内の幹細胞の保存

 

 

・直接覆髄法の成功率 ≦80%

偶発露髄、外傷は成功率高い

う蝕病巣内の露髄 成功率低い

歯頚部露髄より髄角の露髄の方が成功率が高い

 

 

・歯髄再生:動物実験では成功してきている、ようやく人での地検に入る時期だそうです。

 

 

自分なりに収穫の多い1日でした。

 
  

 

 

セミナー帰っからてきて、ある要件でたまたま歯医者の友人と電話で話していたら、

「1日歯髄の話し聞いてきた!? お前の聞きに行く講義はマニアック過ぎる!」と

 

 

考えてみれば、かなりマニアックな話を1日聞いていたなと(笑)

 

 

不況の歯科業界、お金儲けの勉強会もたくさんありますが、私的にはこういう話もいいと思うのです。

 

 

『歯を残す為の勉強』 or 『歯が無くなってからの治療の勉強』 

先生の診療スタイルが如実に出る所ではないでしょうか!?

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