Home> 歯内療法日記 > 根管治療でMTA根管充填することについて

根管治療でMTA根管充填することについて

歯内療法学会もMTAで根管充填する際の同意書の雛形を発行していましたが、

MTAで根管充填することが多くなり、それによってトラブルも増えてきているんでしょうね。

  

一応、EEデンタルでは根管治療前の資料の中に

「MTAセメントで根管充填(最終的な詰め物)を行うことに関して」

という紙を入れておりますので一度目を通してください。

 

また、資料を作っていない先生向けにEEデンタルの資料をオープンにしておきますので

参考にしてみてください。

 

以下、説明文 

 

1990年代に入り、歯内療法はいくつもの大きな革新的な技術・道具・材料が生まれました。

その1つに「MTAセメント」があります。また特許が切れた為、世界中で多くのジェネリックMTAがでてきています。(世界中でこれほど売れ、治療基準を変えてしまった商品はないでしょう)

MTAという材料は、直接覆髄材、パフォレーションリペア材、根管充填材、逆根管充填材、内部・外部吸収材と色々な用途があり、歯内療法の世界ではなくてはならない材料の1つです。

  

私が尊敬するペンシルバニア大学のDr Martin Tropeは

『現在の歯内療法の弱点は、根管充填にガッタパーチャー(ピンク色のゴム)を使用すること』

と話されています。

*根管充填:歯の神経を取った部分に人工材料を詰めること

  

根管治療の最後に「薬」と称して使う材料は100年以上前からガッタパーチャーというゴムを使用していますが、このガッタパーチャーは非常に欠点が多く、

・経時的に劣化、吸収する(収縮する)

・歯と接着性がない(細菌侵入が容易)

・薬効がなく(細菌を殺す力がない)、ガッタパーチャー自体も滅菌できない

・細菌繁殖の足場になる(ゴム自体が細菌に感染され汚染物質となる)

・根の先から出ると異物反応を示すことがある    などが挙げられます。

唯一のメリットは、再治療時に「除去できる(溶かせる)」という点です。

 

昔、私も大学では最終的に詰める材料はガッタパーチャーのみになると教わっていましたが、

専門医の間では、特にやり直しの再根管治療ではMTAセメントを使う傾向が高くなっています。

 

私は2007年の開業時から症例を選んでMTAセメントで根管充填を行っていますが、

根の先が破壊されたケースなどは明らかにガッタパーチャーより成績が良い感触があります

ただ、MTAセメントにも欠点があり、

・一度固まると除去できない (将来的には除去できるMTA製品も出てくるとは思います)

・歯がグレーに変色することがある(変色の少ないジェネリックMTAも出てきています)

よって、MTAで根管充填を行うと再根管治療が出来ないので次は外科的歯内療法での治療となります。

 

海外の歯内療法専門医の教科書では当たり前のようにMTAセメントで根管充填という記述があるのに対して日本では薬事法の関係で根管充填材としては認可されていません。

安全性に関しては動物実験などで1990年代にクリアーされておりますが、こと日本の歯科治療は20年近く遅れを取っており未だに歯科医師の判断の元の使用となっております。

   

もしMTAセメントが根充剤として使えないとなると、世界の歯内療法専門医は成功率が下がってしまい、保存できる歯も抜歯となり非常に困ってしまうほどの、今の所変わりがない材料です。 

当院でも症例を選んでMTAセメントを使わせて頂くことがあることをご了承ください。

 

歯内療法専門医 井野泰伸

 

 

以上がお渡ししている資料になります。

  

例えば、MTAを使用できなければ抜歯になっていた8歳の女の子のケースです、

虫歯治療後に腫れてきた根未完成歯の根管治療 - EE DENTAL_Blog

このようにひと昔前であれば助けれなかった歯もMTAの登場で保存可能な時代になりました。

 

  

毎年データーを取っていますが、

EEデンタルのMTA根管充填率はおおよそ6割弱となります。

EEデンタル2020年 歯内療法専門医 根管治療傾向 - EE DENTAL_Blog

その多くは感染根管治療でやり直しの根管治療の場合です。

成人の歯で初めての神経の治療の抜髄でMTAで根管充填を行うことは殆どありません

    

因みに、日本はMTAを根管充填材として扱っていないのは薬事法の関係です。

MTAを国内で販売しようとした時にどんな治療薬として登録するか!?

直接覆髄材、パフォレーションリペア材、根管充填材、逆根管充填材、内部・外部吸収材

結論的に言えば、MTAを覆髄材で登録した方が、国内の認可が下りるのが早く

逆にMTAを根管充填材として販売しようとすると、多くの時間、費用と労力が掛かる為

メーカーはMTAを国内で販売さえできればいいので、認可のハードルの低い覆髄材として登録をしています。

 

これは私の推測ですが、  

またメーカーは訴訟リスクなどの観点から、適応症を大きくするよりは適応症を小さくし

根管充填に使用され問題が起こった場合は、歯科医師の責任の元ということで企業は

訴訟リスクを回避する為に今も販売元は根管充填材という取り扱いをしておりません。

*当たり前といえば当たり前で私が企業のトップでも同じアクションをします。

 

MTAの使用が絶対嫌!という患者さんもおられると思います。

もしMTAの使用を控えたいという患者さんは事前にお申し出ください

ただ、個人的な肌感覚では以前の治療で大きく削られた歯などはMTAを使用した方が治癒率は高いと思います。

またパフォレーションのリペア材料も現在ほぼMTA1択でこれを使わなければ上手くいきません。

*出来る範囲で治療は行いますが、成功率は低くなるとご理解ください。 

  

後、個人的な意見では、MTAでの根管充填はできるだけ専門性の高い歯科医師で外科的歯内療法

EEdental:外科的歯内療法

が出来る歯科医師がいいと思います。

 

先日もMTAで根管充填を行い、上手く行かず「抜歯しかない」と言われ相談に来られた患者さんがおられましたが、MTA根充する歯科医師はせめて外科的歯内療法が出来ないと使用するべきではないと考えております。

 

以上、普及しつつあるMTA根管充填についてでした( ・∀・)ノ

Index of all entries

Home> 歯内療法日記 > 根管治療でMTA根管充填することについて

購読
Powerd By

Return to page top