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歯内療法日記: 2023年5月アーカイブ
パフォレーションによる痛み
- 2023年5月31日 09:03
- 歯内療法日記
患者さんは30代女性
3カ月前から根管治療(抜髄)をスタート、痛みが続いているが先週レジンコアまで入れた。
でも痛い!
現在の症状は普通にしている時にも痛むし、歯を磨いて歯を触るとt特に痛む。
何とか痛みを取って残せないか!?
レントゲンを撮ると
綺麗な根管治療がしてあり、特に根尖病変は見られません。
ただ、打診などで根管治療中の歯を触ったりするとこの歯だけ大きく痛みあり。
患者さんに痛みの原因はこの歯であること、抜く前に一度保存治療をしてみるか!?
患者さんの了解を得て治療を開始
レジンコアを除去していくと・・・
かなり大きなパフォレーションを発見!
*パフォレーション:歯を削り過ぎて、歯に穴を開ける医原性の問題
歯の中から出てくる出血。。。
ここまで大きく開ければ、前の先生も「パフォった。。。」と分かっていたと思いますが・・・
とりあえず、穴がかなり大きかったので止血の為に水酸化カルシュームを入れこの日は終了
*水酸化カルシュームには止血効果があります、血が止まらないと穴を埋める処置ができません。
2週間後の治療2回目
患者さんに症状を聞くと、「痛みは無くなった」「前のような嫌な感じも無くなった」とのこと
根管内からの出血も止まっており、穴の開いた部分をMTAでパフォレーションリペア
入れてあるガッタパーチャーは戦略的に取りませんでした。
*パフォレーションが大きすぎて、ガッタパーチャーを除去するとこの穴から上顎洞の方にガッタパーが出そうだったので。
仮歯で経過を見ていき、経過も良好だったので
術後1年 セラミッククラウンを入れさせてもらいました。
結論的にいえば、パフォレーションによる歯の痛みでした。
裸眼の治療だと見えない部分を手の感覚だけで治療を行う為、このように歯に穴を開けてしまい ⇒ 抜歯
となることが少なからずあります。
そのリスクを減らすには顕微鏡などの拡大ツールで歯を見ながら治療を行うことでパフォレーションなどは回避出来ます。
難しいのですが、日本の保険診療は治療費が安すぎる為の弊害の1つだとも思います。
(物価を上げて行こうという機運がある中、保険医療費は上げないのか!? 材料費は値上げラッシュなんですが・・・)
今月、別件で来院されたので久しぶりにレントゲンを撮らせてもらいました。
外に出たMTAがだいぶ吸収されています。
患者さんは問題なく普通につかえているとのこと。
歯の治療は悪くなってからだと、治療の難易度がかなり上がった状況になるので、
トラブルにあった歯は専門医に早目に頼んだ方が無難だと思います。
そもそも抜髄スタートで抜歯は・・・ 悲しすぎますよね(*_*)
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セラミックを入れた歯にから膿が出てくる。
- 2023年5月24日 09:08
- 歯内療法日記
患者さんは60代女性
5年前に左下7のレジンがかけてしまい、近医でセラミックアンレーを入れた。
咬み合わせがしっくりこなくて何度も咬み合わせの調整をした。
半年前から歯肉がジクジクし始め、赤くただれてきている。
今かかっている先生には「歯肉炎だからよく磨いてください」と言われたがいつまで経っても改善はなく
治療してくれた先生に診てもらうと、「歯茎のグジュグジュしているのは膿だと思われる」、根管治療をした方がいいと言われた。
根管治療が必要ならとわざわざ新幹線に乗ってEEデンタルへ
まず主訴の歯のレントゲンを撮ると
近心根に根尖病変がり、神経が死んでいると思われる。
ただ、レントゲン的にしっくりこない のでCBCTを撮らせてもらうと。。。
遠心根はかなり大きく骨が溶けている!
この炎症による膿が歯茎に上がってきていると考えれば全て合致する!
*下顎の奥歯などは根尖病変(膿)が小さなレントゲンに映りにくい場合が多々あります。
こういった場合はCBCTが有効です。
と言うことで患者さんに説明をし、根管治療をすることに
ただ、今のセラミックアンレーは適合もよくわざわざ外す必要は無さそう。
と言うことで、今回も3mmの穴から根管治療をすることに
患者さんにはセラミックアンレーは外してもOKと言われましたが、とりあえず次かけたらクラウンにすると方針を出しました。
後、怖いのが咬合(咬み合わせ)
根管治療前に咬み合わせのチェックをすると、側方運動時にかなり強く当たっている
患者さんは過去に矯正治療をしており、ガイドの与え方が悪かったのかも!?
とりあえず、側方運動時に当たる場所だけ歯とセラミックアンレーを削らしてもらい根管治療スタート
1回目に3mmの穴から神経管の掃除、洗浄を行いました。
1か月後の治療2回目
歯茎のグジュグジュした膿は無くなったとのことで、根管充填をすることに
根充剤はガッタパーチャー使用、レジンコア+レジン充填 まで
そこから、大きな症状が出たら連絡、出なければ半年経過後にレントゲンと説明。
根管充填から10か月後の来院時
開口一番、「先生調子いいです!」
綺麗な歯茎に戻り、患者さんも生活に支障なく食べれているとのこと
レントゲンでも骨もだいぶ出来上がってきてくれているように見えます。
虫歯が大きかったりすると、後で神経が死んできてしまうことがあります。
また今回のような下の歯の奥歯などは根尖病変がレントゲンに映りにくい場所なので、
レントゲンを撮っても病変を見つけきれない場合もあります。
何でもかんでもCBCT撮るのは基本的に否定派ですが、ここの場所で診断に困った場合はCBCTで診察を受けた方がいいと思いますね。
EEデンタルは初診代、根管治療費の中にCBCT代は含まれますが、基本的にCBCT撮るのは私が診断に困った際や、根管が複雑そうなどの私の判断の元に撮らせてもらいます。
患者さんから撮ってくださいという場合は、「無駄な被爆で終わるから止めておいたら!?」と諭すことが多いです(笑)
今回のケースは病変が大きかったですが、何とか歯が保存できそうです!( ^_^)/
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海外からの患者さん
- 2023年5月23日 09:00
- 歯内療法日記
年に1~2件、海外にお住いの日本人の方から連絡があります。
一番遠かった患者さんは「ブルキナファソ」
*本歯を入れてもらったかちょっと心配しています。
内容は虫歯治療か根管治療の依頼なのですが、症状がある・ないが1つポイントになると思います。
まず、症状がない場合はゆっくり来院していただければいいと思います。
症状が我慢は出来る弱い痛みの場合 すぐに来院された方が歯を残せる確率は上がります。
症状が大きく我慢が難しい場合は現地の歯科医師に治療をしてもらった方がいいと思います。
今回の患者さんは、20代の女性 ヨーロッパの方へ留学中とのこと
3月の下旬に熱が出た際口全体の歯茎に痛みが出た、その後左上の奥歯に痛みが出た。
現地の歯科①に行くと、パノラマレントゲンで歯が悪い訳ではないと言われ副鼻腔炎を疑われ抗生剤を処方してもらった。
その後、頭、耳の後ろの方も痛くなり内科①を受診 そこでも副鼻腔炎を疑われ抗生剤を追加投与
それでも痛みが残っている為、歯科②を受診 先生に「左上の歯の神経が弱っている」と説明を受ける。
これはちょっと日本で治療を受けた方がいいと思い、EEデンタルへ
患者さんにまず聞いたのは、痛みがあった期間に左側の鼻づまりはあったか!?
「ない」
今は左上の歯全体が痛む、前は夜に大きな痛みがあったが、最近は朝起きると痛い
一度、レントゲンとCBCTで検査するも大きな虫歯、根尖病変はなし
口腔内を顕微鏡で観察するも・・・
これは困った、一番診断が難しいパターン。。。
次にヨーロッパの歯科医師が言っていた弱った歯を探す為に電気歯髄診断
すると、患者さんが痛みが続いていたという左上第一大臼歯は電気反応なし
悪いようには見えない歯・・・
次に咬合をチェックすると、左上第一大臼歯しか咬んでいない。
推測でいうと、咬合性外傷 ⇒ 歯髄が弱る ⇒ 歯髄炎 ではないか!?
ただ、歯髄炎で耳の後ろの方まで痛みが出るのか!?
経験則的に今回の痛み方は府に落ちない、単一因子ではなく複合的な因子が考えられるが
客観的に左上第一大臼歯は要根管治療であることを説明
一度この歯を治療してみて、痛みが引くか様子をみて症状が治まらない場合は他の原因を疑うという方針を出しました。
全く虫歯のない歯だったので、歯に3mmの穴を開けそこから根管治療を行うことに
1回法でもよかったのですが、今回は痛みの経過を見る為2回法にしました。
治療を行うと、やはり神経は死んでおり歯髄からの出血もない
神経管の掃除を行いよく消毒を行い1日目終了
その後、GW期間中に治療している歯の2本前の歯にも痛みが出た。
また左上全体が痛み耳鼻科に行き、「副鼻腔炎」と診断を受け抗生剤をもらい飲んでいる。
治療2回目
左上6はまだ痛いけど弱い痛みに変わった、GW中に痛かった左上4の痛みは無くなった。
左上の全体的な痛みも無くなってきている。
と言うことで、根管充填+レジンコア+レジン充填
白い部分が神経治療をしている穴(3mm)⇒ レジン充填
*この穴の大きさであれば歯の強度を大きく下げずにすみます。
この小さな穴からの根管治療、何かと否定的な意見をいわれる治療法ですが・・・
こんなこと10年以上やっていれば、普通に出来るし気を付けるポイントも重々承知です。
*これを知立の超実習型エンドハンズオンセミナー(アドバンス)でやります。
最後にもう一度咬合調整を行い、治療した歯の咬み合わせを下げると、
患者さんは「右も左にも当たりが出てきた!」と
過去に矯正治療をしていたようなのですが何故かこの歯しか当てって無かったようです・・・
*矯正治療って全てのケースがうまく行く訳ではないので注意が必要です。
とりあえず、痛みもおさまりつつあるのでこのまま様子をみてもらうことになりました。
1週間後、メールがあり痛みも無くなり無事出国できたとのこと。
結論的にいえば、左上第一大臼歯の咬合性外傷による歯髄炎+左側の副鼻腔炎の合併症だったようです。
一時はどうなることやら!?と思いましたが、痛みが引いてくれて良かったですε=( ̄。 ̄;)
海外からの患者さん、一応受け入れはしますがある程度日にちには余裕を持って来院してくださいね。
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親知らずの移植で歯を作る
- 2023年5月20日 09:00
- 歯内療法日記 | EEデンタル こだわり
極たまに親知らずを使って移植 をしています。
と言っても、私は根管治療と補綴担当で抜歯+移植は湯浅先生にお願いしておりますが・・・
*湯浅先生はスペシャリストの尊敬する先生の一人です。
患者さんは全顎治療をさせて頂いた40代男性
右下6が根管治療の仮蓋が取れ、そのまま放置をしてしまったようで中に大きな虫歯+歯根破折が見られます。
*後々、話を聞くと過去の根管治療で何度も何度も痛い思いをして通っていたが症状がなかなか治らないので通院を止めてしまったとか。EEデンタルは根管治療を1回 or 2回で仕上げるのでびっくりしたとか(笑)
患者さんにはこの歯は残念ながら抜歯しかないこと、インプラントは本人が避けたいとのことで
代わりに残っている「左下の親知らずを使って移植してみるか!?」と提案
患者さんの了承を頂き、紹介状をわたし、
⇒
医療センターの湯浅先生に移植をしてもらい
⇒
EEデンタルへ
綺麗に親知らずを移植してくれています。
移植歯の初期固定はスーパーボンドを使用、EEデンタル来院時には固定期間が終った所です。
移植から4週間後ここからまず神経の治療を行います。
*移植した歯は神経が死んでしまうので、移植を行い初期固定が終わったら速やかに神経治療を行います。
「歯を抜いた=神経・血管を切断した」 歯を体の中に戻しても神経・血管は繋がりません。
ここから仮歯を入れ、骨が出来上がってきてくれるのを待ちます。
仮歯を2~3か月後には仮歯を入れて柔らか目のものから咬めるようにします。
移植後半年、骨もできつつあり症状もないことより
フルジルコニアを入れました。
久しぶりに来院があったのレントゲンでチェックさせてもらうと
かなりびっちり歯の周りの骨も出来てくれて経過も良好です。
移植の成功率はざっくり80%
ただ、この80%をより確実にする為に、口腔外科医が移植を行いその後、歯内療法専門医が神経の治療
2人の専門医が自分の得意分野を生かすことで成功率を上げて行きます。
ただ、今回のケースはちょっと出来過ぎかな(笑)
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無理して攻めない根管治療
- 2023年5月16日 09:06
- 歯内療法日記
2023年 口腔内写真
この中に3年前に神経を取った歯が1本あります。
どこか分かりますか!?
患者さんは19歳女性(2020年)
奥歯に痛みが5日続き、緊急歯科で抗生剤をもらい服用中
その際先生に、「奥歯の神経が死んでいる可能性がある」ことを話される。
とりあえずレントゲンを撮ると
口蓋根に根尖病変様の所見あるように見えますが、一応CBCTでも確認して見ると
やはり口蓋根に根尖病変が見られ、近心頬側根は石灰化が著しく根管が見えない。。。
電気歯髄診断でも右上6には反応がなく、この歯の神経が死んでしまい痛みが出ているものと思われる。
また咬み合わせのチェックを行うと、この歯の咬み合わせが非常に強く当たっており
虫歯や治療痕などはないことより咬合により神経が死んでしまったと推測されます。
患者さんとお母さんに根管治療の必要性を話
3mmの穴から根管治療を1回法で行いました。
案の定、MB根は石灰化しており神経管は見当たりませんでした。
*CBCTで見えなくても根管を探せることはありますが、今回の場合はないと判断しました。
歯内療法専門医だから石灰化した根管でも探せるんじゃないか!?と思われる方もいると思いますが、
それは違います、オリジナルの根管がないものは治療できません。
私は先端が0.1mmのマイクロオープナーという道具で根管の入り口を探索して、微妙でもヒントがあれば0.08mmのファイルで治療を行います。
*先端が0.06mmのファイルもありますが、細すぎて押すとすぐに使えなくなるので根管の探索には不向きです。
逆に言えば、先が切れるヤスリで問題ない部分をゴリゴリ削る方がパーフォレーションという医原性の問題を引き起こします。
過去の日本の裁判で、根管充填は根の先まで入れなさいという訳の分からない判決があるので、躍起になってゴリゴリやる先生いますが、それって医学的に正しいのか!?
裁判の判決=医学的に正しいとは全く思いません。
今回の病変は口蓋根ですが、口蓋根は根の先まで治療は出来ています。
で、最初の口腔内写真は2023年来院の際のもの
レントゲンを撮らせてもらうと、口蓋根の病変は綺麗に治癒してくれています。
またファイルの入らなかったMB根には問題は見られません。
歯の色も
術前のグレーの歯よりは改善しているように見えます。
歯内療法専門医は色々なタイプ、考え方の先生がいますが。
私は綺麗なレントゲン所見の為に健康な問題ない部分ゴリゴリ削ってガッタパーチャーは入れませんね( ^ o ^ ) σ
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神経を残すクラック治療と自分なりの破折診断法
- 2023年5月12日 09:02
- 歯内療法日記 | EEデンタル こだわり
2回連続で歯のヒビのケースを書きましたが、
破折・ヒビが原因のフィステル(膿)×3 保存治療を行ってみました - EE DENTAL_Blog
ヒビが入った第一大臼歯の保存 - EE DENTAL_Blog
今回もヒビケース ただ、「神経を保存したケース」
昨日書いた患者さんの反対側の歯:ヒビが入った第一大臼歯の保存 - EE DENTAL_Blog
初診時に右下も咬んだ際に変な感じがあるとのことで顕微鏡で見せてもらうと第一大臼歯の遠心にクラックがあり、一応患者さんに将来的に左下の歯と同じ運命をたどる可能性が高いことを説明させてもらいました。
根管治療半年後の左下の検診時に再度右下6を診察すると
下から2本目
前回より明らかにクラックが開き黒い色素が入っています。
患者さんに症状を聞くと「パンや繊維質のものを咬んだ際に痛みがある」とのこと
この咬んだ時だけ痛いというのは、折れている歯に出る典型的な症状の1つ・・・
レントゲンを撮っても
所見的に全く問題がないように見えます。
なぜ歯が折れるのか!?
これは固いものを咬んだりしたからではなく、原因はだいたい夜間の「歯ぎしり」
現代人はどんなに歯磨きを頑張っていても、咬む力まである程度コントロールしないと歯は失われます。
ちょっと前にも書きましたが、神経が生きている天然歯が折れる歯は
①犬歯誘導ではない、②折れる歯は非機能咬頭の内斜面に強いガイドがある、③咬頭の展開角が急な方も折れやすい
今回のケースは①と②が当てはまります。
横にギコギコ歯ぎしりをすると赤で示した部分にガイドがあり
歯を引き裂くような赤矢印方向に力が加わります。
黄色矢印はエナメル質のクラック 黄色〇部分は歯がかけた所
ただしこの黄色部分が問題を起こすことは稀なので、このままでも大丈夫と判断しています。
*歯髄(神経)方向に破折線が進行することは見たことがありません。咬み合わせによるベクトルの問題だと推測しています。
この非機能咬頭のガイドですが、犬歯のガイドがすり減り奥歯にガイドが移ってしまい起こるので年齢的には40代以上の方が殆どです。
*かなり難しい話をしていますね(笑)
またこの第一大臼歯の遠心舌側咬頭
口頭頂を繋げるラインで見ても1本飛び出しています。
年に数件生活歯の破折を見させてもらい観察していると、ある程度同じような共通所見があります。
因みに神経を取ってクラウンを入れた歯などは
この方向で縦に破折線が現れます。
(生活歯:近遠心方向 失活歯:根尖から歯冠方向)
*神経がある歯、無い歯でも破折線の入り方は異なります。
今回の右下6はまだ破折でも初期の段階で、神経の電気歯髄診断でも「1」という値で正常値だったので
神経は残したまま、フルクラウンにして歯の保存を行いました。
咬合面をガサっと削ってみると、中心窩あたりまでクラックが入っていましたので
このクラック部分を激細のダイヤモンドバーで削り、レジンにて補修
歯肉辺縁辺りにマージンを設定
破折線があった部分の白いものがレジン
その後、仮歯を製作し
これで1~2カ月程度生活してもらい、痛みがないことを確認して本歯を製作していきます。
本歯は咬み合わせを少し低くした状態で入れます。(弱った歯なので)
反対側の左下のように、クラックが進行しそこに細菌感染が起こり神経が死んで膿んでしまうとこのような神経の保存は行えませんが、今回の場合発見が早かったのでまだ神経保存の選択肢がありました。
歯の治療において、治療の介入の時期というものは非常に重要で後手になればなるほど
治療の選択肢はなくなり、また治療難度も高くなり抜歯が近づいてきます。
今回の歯、歯髄が残ってくれれば長く使えると思います。
こんなこと書いていますが、私は咬合(咬み合わせ)の学問不得意です!
自費診療医で良かったと思う1点は、やはり一人の患者さんの話を聞く時間や口の中を観察させてもらう時間が長いので、共通点が見つけやすく経験値が積みやすい点ですね。
卒後勤務医の頃の1日30人治療していた時期は患者さんとはあいさつ程度で話なんて一切していなかったので、完全に作業でした。。。(まぁ、勤務医なので仕方がないんですが)
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ヒビが入った第一大臼歯の保存
- 2023年5月10日 09:00
- 歯内療法日記
患者さんは50代女性
主訴は左下第一大臼歯のレントゲンを撮った所先生に化膿しており神経の治療をした方がいいと言われたとのこと
この歯の経過
30代の頃から咬むと痛かった。
40代で温かい物で痛みが大きくなってきた。その際クラックを疑いインレーを入れた。
55歳で歯茎が腫れてきた為、レーザー治療を3回行った(膿んだ部分を焼き取る治療でこげ臭かった)がその後も度々腫れてきている。
今はフィステル(膿の出口)が2つあり歯が浮いた感じがある。
レントゲンを撮らせてもらいました。
メタルインレーが入っているのですが、神経が死んでしまっています。
過去に根管治療をした形跡なし。
こういった生活歯(神経のある歯)がたまに折れてしまうことはあるのですが、
初期のうちだとレントゲン診断では所見は出てきませんが、この場合でも患者さんに症状を聞くと破折は推測できることがあります。
また、この生活歯の破折は結構経験がものをいう分野で、個人的には破折の診断で必須なのは顕微鏡 10倍以上の拡大率でみると破折線がよく分かります。
話を今回の歯に戻して、
経験上、第二大臼歯がしっかりしている第一大臼歯のこのパターンの時はまだ歯の保存がうまく行くことが多いので患者さんに保存治療を提案
患者さんも残せるのであれば残したいとのことで治療を行いました。
インレーを外すと歯髄に繋がるヒビ
顕微鏡治療で使用している極細のダイヤモンドバーで可能な限りヒビを追います。
ヒビから神経に細菌が中に入ってくる可能性が高いので、ヒビ部分はなるべく削って行きレジンで埋めます。
その後は通法の根管治療を行い治療一回目終了
レントゲン
*黄色い部分がクラックにレジンを埋めた所(極細のダイヤモンドバーを使用)
治療二回目 症状もないことより根管充填
根管充填はガッタパーチャー使用、即日レジンコア+仮歯を入れます。
健康な歯質が沢山残っていますが、破折が進行しないようにクラウンします。
ここから定期的にレントゲンを撮っていきます。
*EEデンタルで根管治療をした歯に関しては、6か月後、1年後にレントゲンを撮らせて頂きます。
10分のレントゲン検診に関しては治療費はかかりません、骨の出来が遅いケースに関しては2年後のレントゲンを撮らせてもらうことも年に2~3件あります。
半年後のレントゲン診査
腫れやフィステルなどもなく、痛みも無いそう。
レントゲンでもだいぶ骨が出来てきてくれています。
この状態であればクラウンに替えても問題無さそうなので、クラウン(本歯)を作っても問題ないと思います。
何も治療したことのない歯でも咬むと痛い歯などは折れていることが稀にあります。
またそういった歯に関してかかりつけの先生も診断に困っているような場合は一度歯内療法専門医などに相談した方がいいと思います。
次回もクラックケースを
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破折・ヒビが原因のフィステル(膿)×3 保存治療を行ってみました
- 2023年5月 9日 09:01
- 歯内療法日記
患者さんは40代女性
3カ月前ぐらいから歯茎に白いものが出来てきた。
痛みはないが歯を押した時、咬んだ時に違和感を感じる。
レントゲンを撮ると、
根尖病変が3つあるのですが、
びっくりしたのがフィステル(膿の出口 ニキビのような所見)の数 3つ。。。
病変それぞれが独立して排膿路を確保している状況
根尖病変が見られても、多くの場合はフィステルなし or 1つ
たまに2つなのですが、数年に1人ぐらいでしょうか、フィステル3つ
患者さんには残す治療はした方がいいが、ちょっと難しそう。
もしかしたら外科的歯内療法になる可能性があることを説明
患者さんは何とか残したいとのことで治療スタート
インレーを外し、詰めてある人工物を取ると・・・
神経方向に向かって走るクラック(ヒビ)!
なるほど、歯が折れてそこから細菌感染して神経が死んでしまったのか。。。
そうなると、咬んだ時だけ痛いという症状の整合性が取れる。
患者さんにクラックのことを説明し、残す方向でトライさせてもらいました。
隔壁を行い、歯の中の神経管を探し出し徹底的に根管洗浄
治療2回目
3つのうち2つのフィステルは消えましたが、1つ「ん~、消えたと判断していいのか!?」という微妙なフィステルが・・・
患者さんに説明行い、もう1度根管洗浄を行う。
治療3回目
腫れも痛みもなくフィステルも消えたことより、根管充填
3壁健康なしっかりした歯は残っていましたが、クラックがあることよりクラウンにすることに
仮歯を作り10か月後
フィステルも出来ていなく骨も出来てきてくれています!
ヒビから神経が死んでしまったケースですが、何とか保存出来そうです。
患者さんから継続してクラウンもやってと言われたので、この後クラウンを製作します。
*この場合、クラウンの咬合(咬み合わせ)の与え方と咬合面の形態に注意を気を使います。
クラックが入った歯の取り扱いはステージごとに分けているのですが、そのステージ判断が難しいのです。
昨日は他の患者さんで経過をみてもらっていた歯 顕微鏡で見ると明らかにクラックで歯が開き始めている。
ただ、無症状で今回のような根尖病変はなく、電気歯髄診断も微弱な電気で反応し生活歯と判断
この場合は根管治療なしでクラウンで治します。
クラックが入った後に、強い冷水痛&温水痛&咬合痛が出てくれば神経の生死を判断し、根管治療+クラウン
クラックが入って根尖病変(膿)が出来た場合 ダメ元で根管治療を行い予後が良ければクラウン
完全に2つに割れた場合 ⇒ 私は抜歯を勧めます。
*どうしても残したい人は・・・接着修復の先生の歯科医院に行ってもらいます。
個人的にはこういったクラック
しっかりした第2大臼歯がある第1大臼歯の場合は早目なら比較的予後がいい、第2大臼歯は・・・
治らず何本か抜歯をしています。
私なりの考察:最後大臼歯(歯の一番奥歯)は歯の負担が大きくクラックが進行してしまう、第2大臼歯がしっかりしていれば第1大臼歯は守られるので奥から2本目の歯にクラックが入ったケースは予後が良い。
追記:
【神経のある歯が折れる方】は、①犬歯誘導ではない、②折れる歯は非機能咬頭の内斜面に強いガイドがある、③咬頭の展開角が急な方も折れやすい
不思議なんですが、神経の生きた歯のクラックってなぜか前歯では起こらず臼歯(奥歯)に起こり、上顎は第2小臼歯、下顎は第1・2小臼歯には今の所見たことありません。
結局、歯の寿命って、最後は咬合(咬み合わせ・咬む力)なんだなと思います。
追記2:
無事クラウンが入りました。
だいぶ骨も出来てきてくれています。
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