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神経を残すクラック治療と自分なりの破折診断法
- 2023年5月12日 09:02
- 歯内療法日記 | EEデンタル こだわり
2回連続で歯のヒビのケースを書きましたが、
破折・ヒビが原因のフィステル(膿)×3 保存治療を行ってみました - EE DENTAL_Blog
ヒビが入った第一大臼歯の保存 - EE DENTAL_Blog
今回もヒビケース ただ、「神経を保存したケース」
昨日書いた患者さんの反対側の歯:ヒビが入った第一大臼歯の保存 - EE DENTAL_Blog
初診時に右下も咬んだ際に変な感じがあるとのことで顕微鏡で見せてもらうと第一大臼歯の遠心にクラックがあり、一応患者さんに将来的に左下の歯と同じ運命をたどる可能性が高いことを説明させてもらいました。
根管治療半年後の左下の検診時に再度右下6を診察すると
下から2本目
前回より明らかにクラックが開き黒い色素が入っています。
患者さんに症状を聞くと「パンや繊維質のものを咬んだ際に痛みがある」とのこと
この咬んだ時だけ痛いというのは、折れている歯に出る典型的な症状の1つ・・・
レントゲンを撮っても
所見的に全く問題がないように見えます。
なぜ歯が折れるのか!?
これは固いものを咬んだりしたからではなく、原因はだいたい夜間の「歯ぎしり」
現代人はどんなに歯磨きを頑張っていても、咬む力まである程度コントロールしないと歯は失われます。
ちょっと前にも書きましたが、神経が生きている天然歯が折れる歯は
①犬歯誘導ではない、②折れる歯は非機能咬頭の内斜面に強いガイドがある、③咬頭の展開角が急な方も折れやすい
今回のケースは①と②が当てはまります。
横にギコギコ歯ぎしりをすると赤で示した部分にガイドがあり
歯を引き裂くような赤矢印方向に力が加わります。
黄色矢印はエナメル質のクラック 黄色〇部分は歯がかけた所
ただしこの黄色部分が問題を起こすことは稀なので、このままでも大丈夫と判断しています。
*歯髄(神経)方向に破折線が進行することは見たことがありません。咬み合わせによるベクトルの問題だと推測しています。
この非機能咬頭のガイドですが、犬歯のガイドがすり減り奥歯にガイドが移ってしまい起こるので年齢的には40代以上の方が殆どです。
*かなり難しい話をしていますね(笑)
またこの第一大臼歯の遠心舌側咬頭
口頭頂を繋げるラインで見ても1本飛び出しています。
年に数件生活歯の破折を見させてもらい観察していると、ある程度同じような共通所見があります。
因みに神経を取ってクラウンを入れた歯などは
この方向で縦に破折線が現れます。
(生活歯:近遠心方向 失活歯:根尖から歯冠方向)
*神経がある歯、無い歯でも破折線の入り方は異なります。
今回の右下6はまだ破折でも初期の段階で、神経の電気歯髄診断でも「1」という値で正常値だったので
神経は残したまま、フルクラウンにして歯の保存を行いました。
咬合面をガサっと削ってみると、中心窩あたりまでクラックが入っていましたので
このクラック部分を激細のダイヤモンドバーで削り、レジンにて補修
歯肉辺縁辺りにマージンを設定
破折線があった部分の白いものがレジン
その後、仮歯を製作し
これで1~2カ月程度生活してもらい、痛みがないことを確認して本歯を製作していきます。
本歯は咬み合わせを少し低くした状態で入れます。(弱った歯なので)
反対側の左下のように、クラックが進行しそこに細菌感染が起こり神経が死んで膿んでしまうとこのような神経の保存は行えませんが、今回の場合発見が早かったのでまだ神経保存の選択肢がありました。
歯の治療において、治療の介入の時期というものは非常に重要で後手になればなるほど
治療の選択肢はなくなり、また治療難度も高くなり抜歯が近づいてきます。
今回の歯、歯髄が残ってくれれば長く使えると思います。
こんなこと書いていますが、私は咬合(咬み合わせ)の学問不得意です!
自費診療医で良かったと思う1点は、やはり一人の患者さんの話を聞く時間や口の中を観察させてもらう時間が長いので、共通点が見つけやすく経験値が積みやすい点ですね。
卒後勤務医の頃の1日30人治療していた時期は患者さんとはあいさつ程度で話なんて一切していなかったので、完全に作業でした。。。(まぁ、勤務医なので仕方がないんですが)
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