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歯内療法日記: 2020年8月アーカイブ

歯髄壊死(ネクローシスパルプ)の根管治療

患者さんは40代女性 

2年前から歯茎が腫れ膿が出てくる。症状はたまに痛い日もあり違和感もある。

かかりつけの先生は様子を見るだけで、2件目の歯科医院で治療した方がいいと言われた。

とのこと

 

2020 EEdental YuA (3).jpg

第一大臼歯の根尖近くに腫れ(イボ状の膨らみ)

 

 

レントゲン

2020 EEdental YuA (1).jpg

第二小臼歯(5番)、第一大臼歯(6番)の2本に根尖病変が見られます。

手前の第二小臼歯は過去の治療で神経付近まで削ってあり、それにより神経が死んでしまった。

奥側の第一大臼歯は治療痕が見られず、咬合性外傷(噛み合わせ)により神経が死んで来たと推測

 

患者さんには第二小臼歯は歯質の残存量が少ない為、クラウンにする必要がある

第一大臼歯は3mmの穴を咬合面に開け根管治療+レジン充填+咬合調整と説明

 

 

治療1回目 

まず奥歯の第一大臼歯を3mmの穴から4本の神経管(MB,MB2,DB,P)を根管治療

2020 EEdental YuA (4).jpg

 

2回目の来院時

・腫れが収まっていない

2本の歯のうちどちらの歯が腫れの原因か調べてみる

2020 EEdental YuA (2).jpg

フィステル(*)からアクセサリーポイントを入れ原因歯を特定する

白い線が第一大臼歯に行くので現在の腫れの原因はこちらの方と判断

CBCTでも

2020 EEdental YuA (9).jpg

ここの頬側皮質骨がありませんので、第一大臼歯が腫れの原因と思われます。

 

この日は、

第二小臼歯を1回法で根管治療+コアまで行う 

  

(*)最近歯科の世界は【フィステル】と言わなくなってきているようで

【フィステル(ドイツ語)】を【サイナストラクト(英語)】というようになってきています。

因みに日本語で言うと【瘻孔(ろうこう)】です。

 

歯科の世界は何故か用語名が変わるのでそれについて行かねばなりません。

正直、ドイツ語、英語でもどっちでもいいじゃん!と思うのですが・・・

  

 

治療3回目

腫れはだいぶ小さくなってきている

原因歯の第一大臼歯の歯の中も膿は見られない。

第二小臼歯に仮歯を入れしばらく様子をみることに 

  

 

2カ月後

  

治療4回目

腫れはなくなり、第一大臼歯の根管充填+レジン充填

2020 EEdental YuA (5).jpg

 

2020 EEdental YuA (6).jpg

3mmの穴をレジン充填

 

ここからレントゲンで経過観察

 

5か月後

2020 EEdental YuA (7).jpg

治癒傾向が見られ、第二小臼歯にセラミッククラウンを入れようと思ったところにコロナ・・・

  

 

しばらく経った今月ようやくセラミッククラウンSet

2020 EEdental YuA (8).jpg

病変も綺麗に治癒し、セラミッククラウンも段差なく綺麗に入りました。

 

遠くからの来院お疲れさまでした(^。^)

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根管治療後にレジンビルドアップをして10年

カルテナンバー二桁の患者さんの10年前に治療させてもらった歯

2020 EEdental TaY  (1).jpg

神経の治療を行いレジンでビルドアップ

http://www.eedental.jp/buildup.html

 

破折防止・予知性の為にクラウンが推奨されていますが・・・

 

私はケースを選んでレジンコア後にレジン充填

こんなことし始めた頃の初期症例ですが、

2020 EEdental TaY  (2).jpg

問題なく経過しております。

 

開業当時は、根尖まできちんと根管充填しなければと思ってやっていましたが、

現在はショート根管充填メインでやっています。

 

「10年ひと昔」

自分の中でも細かな部分は10年もすると変わってきています。

 

私の中でレジンのビルドアップで大丈夫と思われるケースに関しては

根管治療前の術前時に「こんな方法もありますよ」と提示をさせてもらいます。

 

すでにクラウンが入っているようなケースは残念ながら不適応症になります。 

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再根管治療時のガッタパーチャー除去

12月講演「ネタ作り」スタートしました。

http://eedental.jp/ee_diary/2019/12/post-1997.html

   

事務局からもらった質問メール

長崎県 福〇〇一先生(6/30第3回CR実習受講)

根管充填材(GP)除去について質問があります。

例えば、下顎第一大臼歯近心根管(湾曲している・歯根長も比較的長い)の号数30〜40程度の根充材を除去する

場合における手順と使用器具を根管口部から根尖まで順に動画等でご説明いただけないでしょうか?

よろしくお願い致します。

 

 

今回使用した2.5mmの穴からの根管治療した歯

EEdental 2.5mm.jpg

来年のハンズオンではこれをやろうかと検討中

 

動画はこの歯の再治療を行います。 

 

私のGP除去 

 

≪大きく分けると3パート≫

1、エアースケーラーによる音波チップ(キャビテーション効果)

 *エンド三角、根管口付近の汚れた歯質もこれで除去を行いフレアー状に形成します

2、溶解剤を使用した超音波チップによる溶解

 *超音波チップは細く削ったり、ベンディングしたりして多少加工います。

3、溶解後にハンドファイル(K#15)による除去+穿通操作

 *必ず先端をベンディングさせてください。真っ直ぐなファイルは先端でレッジを作ってしまいます

@12月の講演の際に細かく勘所などの説明を行います。  

 

大切なのはGPは除去しきれないという事実をまず知ることです。

一度入れたGPは溶解剤を使用しなければ取れませんが、根尖から多少漏れ出てしまいこと、イスムスやフィン、側枝にGP入れてしまうことになります。

 

今回#30のHファイルを先端まで穿通した後にレントゲンを撮りましたが、フィンなどに残ってしまっています。

 

12月の講演の午後のネタで使わせてもらおうと思っている質問コーナー

(現在30以上の質問を頂いております)

質問は今月一杯まで受け付けておりますので何か聞きたいネタあれば 事務局まで

https://www.chiryu.biz/

メールでお教えください。

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歯内療法専門医の新旧診断法

患者さんは40代の女性

何度か治療しているが治らず2年以上前から膿が出るとのことで、

CBCTがある歯科医院へ転院そこでCBCTを撮り、

これは歯内療法専門医の歯科医院で治療した方がいいと説明され、

EEデンタルを紹介してもらい来院

   

奥歯の神経管は複雑でまず治療する前の【診断】が重要です。

  

CBCTがなかった時代は角度を変えてレントゲンを2枚撮り

2020 EEdental IE (1).jpg

術者の頭の中で歯の形を想像する。

 

すると

2020 EEdental IE (2).jpg

図1では根の数が2本に見えますが、

図2では②の陰に隠れた神経管③が確認できます。

また③の隠れた神経管は手づかずで治療している痕がなく、ここが腫れの原因と考えられます。

   

たぶん、この神経管を探して治療すれば治るだろうと推測していました。

 

 

が、

 

CBCTでは、

2020 EEdental IE (3).jpg

病変の位置大きさから、①、③が最近感染していることが分かり、

更に、神経管の太さや湾曲も分かる時代です。

  

ですから、

2020 EEdental IE (4).jpg 

③同様に①も丁寧にやり直す必要があると分かります。

逆にいえば、②の根管は感染していないので、それなりのケアですみそう。

   

今回のようなケースは年に何本もあり、専門医であれば過去の経験から

「あ、このパターンね」と大体分かります。

   

ただ、このパターン 非常にリスキーで

・③の神経管が非常に分かりにくい場所から出てくる(壁やパフォ起こしそうな場所)

・③の神経管の軸がかなり外開きで①、②の神経管の軸とはかなり方向が異なる

・神経管の湾曲度がかなり大きい場合もあり、NI-TIファイルを折りやすい

など経験に当て始めます。

   

レントゲンで分かっても、手を動かしてきとんと感染源を除去出来ないと治らないので、

ある程度の「技術」というもは診断後に必要にはなります。

*宝探しの地図がCBCTで宝を探し掘る当てるのは人の技量ということです。

   

 

1回目に神経管を探し出し、2回目に膿が出なくなったのを確認し、

2020 EEdental IE (5).jpg

根管充填+レジンコア+仮歯まで

 

この後、半年程度仮歯で過ごしてもらいレントゲンで経過を見ていきます。

  

 

「治療前にまず診断を」というのを心掛けています(・∀・)ノ

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どうする根の内部・外部吸収!?

先日も外部吸収で検索したらEEデンタルが出てきたので来院したという患者さんがおられましたが、

基本的には吸収はそれほど専門ではないのですが、歯内療法専門医をしている為年に数本は吸収歯を見ます。

http://eedental.jp/MTOS/cgi-bin/mt-search.cgi?search=%E5%A4%96%E9%83%A8%E5%90%B8%E5%8F%8E&IncludeBlogs=4&limit=20

  

患者さんは30代女性

膿が出ており、何件か歯科医院に行き右下の内部・外部吸収した歯を指摘される。

保存治療を行うのであれば歯内療法専門医の歯科医院で相談した方がいいと言われ来院

   

私の外部吸収の歯の治療方針は、

「症状なければ放置、感染してしまい膿が出てきたら抜歯覚悟で保存治療を試みる」です。

 

 

レントゲンとCBCTを撮り

2020 EEdental OYa (1).JPG

ある程度吸収の場所と大きさを確認、かなり大きく吸収が進んでしまっています・・・

   

 この状態だと抜歯も1つの選択肢ですが、まだ30代ということもあり保存治療を行うことに

  

まず外部・内部吸収を起こしている部分の削除を行い、隔壁(外科的レジン)

2020 EEdental OYa (2).JPG

本当は1回法で根管充填まで行おうと計画していたのですが、

CBCTで確認していた場所以外にも外部吸収が見られ、また開口量が少なく器具もなかなか入らない場所だった為

1回目の治療は2時間半頂いていたのですが、穿通・拡大・洗浄までで時間となり終了

   

2回目の治療

2020 EEdental OYa (3).jpg

 膿、腫れ、痛みのないのを確認して根管充填+レジンコア

  

経過観察をしていき

2020 EEdental OYa (4).jpg

9か月問題ないのを確認して、本歯を作ることに

 

2020 EEdental OYa (5).jpg

フルジルコニアクラウンSet

 

内部・外部吸収の予後は、この先問題が出るまでの保存治療となってしまいますが、

治療自体は綺麗に出来たかと思います。

 

10年ぐらいは持ってもらいたいものです。 

 

後、ライジングサンコーヒーのマグカップもありがとうございました!

IMG_1527.jpg

「HAVE A GOOD WAVE」

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髪の毛より細い道具を使った根管治療

患者さんは40代女性

以前のブログの「難易度高し!超石灰化根管」

http://eedental.jp/ee_diary/2020/07/post-2090.html

の反対側の歯(第2小臼歯)

      

 

レントゲン

2020 EEdental INK (1).jpg

この歯も石灰化が進んでおり、神経が死んで根尖病変(赤丸)が見られます。

隣の歯の神経管に比べ当該歯は黒い線(神経管)が見つかりません。

       

 

そんな時はCBCT

当院の超マニアックなCTはスライスピッチ0.085mm

*メーカーの人に「全然売れていないから、値引き殆どないですよ」と踏み止まるようにいわれた機種(笑)

  

その単位での解析は可能!

0.085mm以下になると識別不可能となります。

2020 EEdental INK (2).jpg

ターゲットを第2小臼歯に合わせ色々な角度から見てみる

 

2020 EEdental INK (3).jpg

ん~~、よく分からん。。。

   

 

しかし、矢状断で色々な方向から見てみると1点ピントのあう所が!

2020 EEdental INK (4).jpg

根中央部より下には極細の神経管っぽい黒い線が確認できます。

ということは解析能力の0.085mm以上は神経管の太さがあると判断

 

日本人の髪の毛の太さは0.08mmとのことなので、歯の中から髪の毛を除去する治療に例えれます。

 

が、

 

ただ神経管はストレートな直毛ではなく、いわば「くせ毛」

微妙にクネクネ曲がっており、時に太い部分、細い部分が存在します。

    

   

まず髄腔開口

*小臼歯は軸を間違えるといけないので私はこの場合ラバーダムしませんでした。

2020 EEdental INK (6).jpg

レントゲンで大きく軸がズレていないことを確認し、

軸を間違えてスタートしては、髪の毛のような細さの神経の断面は見つけれません。  

 

 

ラッキーなことに、

元神経管であった場所をに先端が0.1mmのマイクロオープナーが

微妙に引っかかる場所があり、そこから微量の液体が出てくる。

*顕微鏡でわずかに見える浸出液です。

  

そこから髪の毛より細い0.06mmのKファイル(針金)を顕微鏡でその穴に合わせ挿入

すると3mmほど入る!

 

 

「きたぁ~~~~!」(心の叫び!)

ターゲット捕捉です。

 

 

*06Kファイルを入る所まで入れ、その後Ni-Tiファイルのオープナーで上を削り、

再び06Kファイルを入る所までいれ、またNi-Tiオープナーで上を削るの繰り返しで

気長に少しずつ慎重に根の先に0.06mmのファイルを勧めます。

  

この繰り返しをすること30分 0.06mmのファイルを根尖までとどかせる。

その後0.08mmのファイルを30秒で通し、次のNi-Tiファイルを安全に通す為のガイドを少し太くする。   

   

穿通してしまえばこちらのもの、あとはシステマチックにNi-Tiで拡大し

  

開始から1時間40分後

2020 EEdental IK (8).jpg

拡大・洗浄後、根管充填⇒レジンコア、レジン充填

 

治療後のレントゲン

2020 EEdental INK (5).jpg

何とか根の先まで綺麗に治療の方が完了しました!

  

 

レントゲン上で確認できない根管=難易度が高い ということは言えます。

そんな時はCBCTは非常に有効でエンド(根管治療)モードなど細かな解析ができる道具は有効です。

が、レントゲンやCBCTで手に入るのは情報です。

極細の神経管があるのは分かっても治療は人の手で行うので、

戦略と経験がものを言います。(この辺りは職人と言われる分野です) 

  

 

使用ファイル

2020 EEdental INK (7).jpg

*今回の1本の神経管を探し削り取るまでに使用した針金ヤスリです。

0.06mm~0.25mmの道具を使用

  

歯冠を落とさず(歯を削らず)治療を行うので必然的に作業長は長くなり、

これも難易度を上げている1つの要因ではあります。

*レジン治療を成立させるためにわざと難しいことをしています。 

   

  

後、こういう根管のファイル操作はプッシュ&プルが基本で

大学で教わるターン&プルを使うとレッジを作り、作った時点でTHE エンドです。

二度と本来の根管にはアプローチできなくなります。

 

 

この辺りは12月の講演と来年のハンズオンで説明したいと思います。

http://eedental.jp/ee_diary/2020/07/12-1.html

 

追記:

レントゲンで根管の確認できない超石灰化根管の予後報告 - EE DENTAL_Blog 

いやいや、2本とも奇跡ですわ!(^。^)

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