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歯内療法日記: 2022年4月アーカイブ
女性に多い、下顎第2大臼歯の樋状根
- 2022年4月23日 09:09
- 歯内療法日記
今日から顕微鏡学会ですが、私は今日の診療後歯科医師会の夜間当番なので
東京には行かずWebで拝見させて頂きます。
佐藤先生頑張ってください!(^。^)
今回のケースはかなり難易度の高かったケースでしたが、
結論的にいえば無事治ってくれたケースです。
患者さんは40代女性
凄い痛い訳ではないが、前々から時々鈍い痛みがあった。
ここ1~2週は特に痛みを感じる、特に疲れた時などは痛みが出る。
6年前、再根管治療を行っている とのこと
レントゲン
第2大臼歯は前の先生も相当頑張って治療した跡が見られますが、
樋状根の為か、手づかずの神経管がありそうで根尖病変が見られます。
根尖病変があるので、たぶん痛みの出ている歯は第2大臼歯と思われます。
患者さんは小さな女性の方で、この手づかずの神経管に道具が入るか!?が心配ではありました。
過去に2回根管治療していますが、探しきれないということはたぶん見つけにくい場所に隠れていると推測できます。
治療1回目
人工物を除去して、隠れていた神経管を1本探し出し穿通・拡大・洗浄
これで綺麗に処理出来ただろうと、レントゲンでの術中チェック
術前時に手づかずと判断していた部分は触れていません。
つまり今回探し治療した場所とは違う場所にもう1根あったようです。
顕微鏡でも入り口が隠れていると見つけれないこともあります。
治療2回目
CTでだいたいの当たりをつけ、その部分を徹底的に攻めると
入り口部分が石灰化をして隠れていましたが、無事入り口発見!
ただ、なかなか穿通出来ない・・・
30分近くかけ探し出した神経管に#06穿通(0.06mmの金属ヤスリ)
そこからはフォーマット通り、#06を少し出しレシプロでガイドを広げ
(このケース一度#06抜くと元に戻せない気がしたので2分近くレシプロでガイドを太くしました)
開口量の少ない(口が開かない)患者さんでしたが、時に患者さんに時に大きく開いてもらいNi-Ti(プロテーパーゴールド)で拡大
この拡大もコツがあるのですが、
なんで日本ではもっとプロテーパーゴールドのSXが評価されないのか不思議
個人的にはこのファイルが無くなると作業効率が格段に下がると言っていいぐらい優秀なファイルだと思うのですが・・・
隠れた根管を拡大し、洗浄を行い根管充填+支台築造(土台)
歯根の前側に2本線が増えているのが分かりますかね!?
歯の外に押し出されたガッタパーチャーは除去出来ませんでした。
1年予後で来院して頂くと、左下は全く痛まないとのこと
綺麗に骨が出来てくれています。
結果論的にいえば、未処理の根管が細菌感染して根尖病変ができていたと思われます。
つまり、ここを綺麗に処理できなければ抜歯になってしまった可能性があります。
レシプロの使い方とプロテーパーの「SX」があったからこそ治療できた1ケースでした。
根管治療は使いやすい、攻めやすい道具に出会えることも技術を上げる1つになりますヽ(・ε・ )
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治療の難しい根管治療(パフォレーションリペア、ヘミセクション)
- 2022年4月20日 09:02
- 歯内療法日記
患者さんは50代女性 隣町の歯科医院からの紹介
歯が痛く痛み止めがかかせないとのこと
レントゲンを撮ると
第2小臼歯:歯が揺れており咬合性外傷に思える歯髄死(ネクローシスパルプ)
第1大臼歯:近心、遠心に根尖病変 また近心根は破折を疑わせる所見あり
紹介状には、上からレジンコアを外そうと思ったがレジンでびっちり埋めてあり
パフォレーションの恐れがあった為、治療の途中で専門医で治療した方がいいと判断していますとのこと
患者さんには根尖病変も大きく、所見的にだいぶ難しい治療になりそうであること
やることは最大限やってみるが、抜歯の可能性もありと説明
治療を開始
顕微鏡下で慎重にレジンコアを除去して行くと・・・
大きなパフォレーション×2 と近心根にうっすら破折線
前の先生も頑張って根管口を見つける為に起こしてしまったことだとは思いますが、
裸眼で髄床底削るのは非常にリスキー!
とりあえず、パフォレーション部分をMTAを使用してリペア
第一小臼歯は1回法で根管充填まで行い、咬合性外傷によると思われる動揺を取る為に
咬合面を大きく落とす(噛み合わせの負担を軽減させると揺れが収まることがある)
遠心根は2根であったが、1つの根は全く手づかずであり、根尖病変はその根が原因だと思われる。
1か月後に来院してもらうと腫れてきており、だんだん痛みもまた出てきたとのこと。
診断を行うと、第1大臼歯の近心根の破折による腫れと推測でき、
患者さんにヘミセクションを行い手前の歯とブリッジにすることを提案
そこからしばらく残す為の洗浄を2回行ったのですが、
腫れは引いてこないので、
提案から2か月後に「ヘミセクション(分割抜歯)」
傾斜歯なので慎重に分割
年に4~5本分割抜歯していますが、やはり分割は顕微鏡があった方が切断面を綺麗に切れます。
*極論を言えば歯科治療は全てにおいて顕微鏡下での治療を勧めます(笑)
分割後に仮歯のブリッジを入れて経過観察を行うことに、
半年後には第2小臼歯の揺れもほぼ無くなりました。
その後患者さんから矯正をするとのことでした。
矯正中でしたが、レントゲン検診にきてもらい
理想的に骨が回復してくれています。
この状態であれば、矯正後にかかりつけの先生にブリッジを入れても問題無さそうです!
0.5本は歯を抜かせてもらいましたが、最悪2本抜くことは避けることができました(・ω・;)ゞ
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根管治療が終わらない原因不明の痛み
- 2022年4月15日 09:01
- 歯内療法日記
患者さんは20代女性
根管治療をスタートして週に1回治療をつづけ早4か月
先生に「痛みの原因が分からない」と言われ不安になり歯内療法専門医の歯科医院へ
レントゲンを撮ると
治療中の第1大臼歯には根尖病変は見られませんが、
その隣の第2大臼歯には根尖病変+上顎洞内に入るGP、近心パフォレーションの疑いがみられます。
患者さんには①治療途中の第1大臼歯の根管治療を行い
痛みが引かない場合は根尖病変のある②第2大臼歯の方を治療する必要があると説明
ただ、過去の治療で残っている歯質がないので、根尖病変を治すために第2大臼歯は抜歯も考える必要がある。
患者さんには経験上、痛みが長期化したケースは治療してもすぐに痛みは消えないことを説明
また半年やっても症状に変化がない場合は非原性歯痛を疑い、ペインクリニックなどで投薬治療になると説明
この日は診断だけ行い初診は終了
2週間後「凄く痛い」と連絡があり、抗生剤の投与
痛みがある程度引いたあとに1回目の第1大臼歯の根管治療スタート
手づかずのMB2はあるものの根管内はさほど汚れている感じはない
MB2を処理して徹底的に根管洗浄を行いキリのいい所まで治療を行う。
1回目の治療から2週間後
また大きな痛みが出てきたが一番奥の第2大臼歯が痛い感じとのこと
また抗生剤を3日飲んでもらう。
そこから更に2週間後
痛みは治療前と変わらない。半日ぐらい痛みが出る時もある。
口腔内を触らせてもらうと第1大臼歯を触ると痛い
確かに前の治療していた先生が言われた「痛みの原因が分からない」も納得できる。。。
ただ経験上、第2大臼歯の方が怪しい・・・
次の展開として、ここを治療をして痛みの改善があるかを見た方が良さそう
患者さんに了解を得て第2大臼歯の根管治療
過去に2回根管治療をしており、かなり歯質がない歯ですが、とりあえず残す方向で治療を行うと
案の定、パフォレーション。。。
歯頚部だったので、レジンでパフォレーションリペア
口蓋根は太く削られており、ガッタパーチャーは上顎洞に入り込んでいましたが除去出来ず。
とりあえず根管内を綺麗にして仮蓋
先日他の患者さんに驚かれましたが、
歯科治療の見えない所は手の感覚のみで治療しているので隣の歯を削ったり、歯に穴を開けたりは残念ながら避けれません。
患者さん的に言えば、歯科医師はよく見えているものだと思われていますが、
正直前歯でも歯の裏側はミラーを使い手の感覚を頼っての治療が多いです。
奥歯などは多くの場合で盲目的に手の感覚で治療を行っているのが通常治療です。
ですからYouTubeの顕微鏡下での治療というのは、スーパーセントのイレギュラーなものだと思ってください。
で、話を戻して
スタートから2か月後の治療4回目 インタビュー+洗浄
痛みは変わらずあるが3種類に分かれる
1、激痛が1カ月で3回ぐらい 数分続く感じ
2、じんじんする痛みが夕方から寝るまで毎日ある
3、冷たいもの温かいもの、甘いものが凍みる
日中はあまり気にならなくなってきた。
それより手前の第2小臼歯が気になる感じ
処方された痛み止め10回分は全て飲んだ
とりあえず洗浄を行いましたが、根管内は綺麗な状態で膿などは見られません。
レントゲン
第2小臼歯の銀の下には小さな虫歯はありそうですが、これが痛みの原因になるとは考えにくいので今は触らない方がいいと説明。
*複数本触ると更に診断が厄介になるので
ここからは根管内を特に削る必要はないので、
1カ月おきに来院してもらい症状に変化があったかインタビュー
2カ月おきに根管内洗浄(15分)
の繰り返しを行います。
更に1か月後の治療から3か月後 インタビューのみ
1週間に1~2回痛い 痛みは1時間ぐらい続く
今回は痛み止めを1回も飲んでいない。
⇒ 患者さんには、痛かったら我慢せずに痛み止めを飲むように指導(痛みのない時間を作るように)
更に1か月後の治療から4か月後 インタビュー+洗浄
痛みが再び出てきた時があり、ロキソニンもあまり効かない
歩くと歯に響く
ただ、痛みの頻度は減ってきている初診時の痛みを「10」とすると今は「5」ぐらい
レントゲン
悪くなっているようなレントゲン所見はなし!
ラバーダムをして洗浄を行うも根管内からは膿のよう所見一切なし。
更に1か月後治療から5か月後 インタビューのみ
痛みはだいぶ減ってきた。
寝るときに少し気になる程度
症状もだいぶ減ってきたことより、
次回第2大臼歯の根管充填+支台築造(土台)を行うことにしました。
治療開始から6か月 第2大臼歯の根管充填
治療中によく見るとMB根に小さなストリップパフォレーションがあり、MTAにて根管充填
更に1か月後 治療開始から7カ月 第1大臼歯の根管充填
来院2日前に噛みしめをしてしまい、一時的に痛みが出たとのこと
根管充填を行うと一時的に痛みがぶり返す可能性もあるが、その場合は
待てば収まることが殆どだから痛み止めを飲んで散らすように説明
ここからもう少し痛みが 引いたら仮歯を入れ咬めるようにする予定を立てました。
根管充填から3か月後のレントゲン検診
第2大臼歯:痛みはない
第1大臼歯:押して痛い時がある、痛みもたまに出る感じ
特に悪くなっている症状、所見がないことでこの日仮歯を2本の歯にセット
根管充填から6か月後
痛みはだいぶ引いて来た、腫れもない
仮歯で食事も取れており、問題無さそうなのでかかりつけで補綴してもらうことに
根管治療後1年
第2大臼歯の根尖病変は綺麗に治ってきて上顎洞底線がはっきり確認できます。
症状は時々痛い日もあるが、その日は痛み止めで散らしている
1カ月間なにも痛みもない月もあり、痛みの頻度はだいぶ減ってきている。
とのことで、このまま様子を見て行けば症状はもっと減るような気がするので更に待つことにしました。
今回の場合は患者さん自ら歯科医院を探し受診をされました。
前に治療をしていた先生は保険の先生でしたが、やはり難しい場合というのは個人でかかえるのではなく、早目に大学病院や専門医の歯科医院へ紹介してあげた方がいいような気がします。
我々歯科医師の仕事はまず第一に「患者さんの痛みを取る」ですから、自分の技量で症状を改善できるか!?
根管治療は痛みというトラブルを抱えやすい治療の代表格です。
特にこのようなトラブルは女性の上顎に多く見られます。
痛みが長期化すると、痛みが引くのにも時間がかかりますので痛い中根管治療を続けている患者さんはある程度の所で一度専門医に相談するもの考えられた方がいいでしょうね!
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変わる根管充填の重要性
- 2022年4月 8日 09:11
- 歯内療法日記
今日は「梅」の誕生日でEEデンタルに来て2年が経過します。
梅ファンが多いのでご報告まで、
さて、私が歯科医師になった頃
「根管充填が根の先までしっかりしていれば、根管治療は成功する」
的な考えが一般的で、
「根管充填を綺麗に行うためには!?」
「側方加圧にくらべ垂直加圧の方が優れている!?」
「シーラーは〇〇がいい」
など根管充填の為の根管治療でした。
今の私が当時の私に言えることは、
「そんなことにあまりこだわらなくていいよ!」
と言ってあげたいです(笑)
ただ、今もこの考え方というのは日本では根強い支持がありますが、
この考え方は一世代、二世代前の考え方とも言えます。
つまりは旧式根管治療(オールドエンド)
逆に言えるのは、ここにこだわったから『今の技術がある』ということも言えます。
こだわりは無駄にはならないという気がします。
結果、根管充填後すぐに根充確認のレントゲンは撮らなくなりました。
*根管充填後のレントゲンは撮りますがレジンで土台を作り、細菌が歯の中に入らなくなった状態でレントゲンを撮ります。
ですので、こんなケースも稀にあります。
患者さんは40代女性
歯が大きくかけ抜歯宣告状態
かける前は痛みがあったが今は落ち着いている、またかけた所は近医で仮蓋だけ作ってもらった。
レントゲンを撮りチェック
歯茎の下の方まで過去の治療で削ってあり中で虫歯が大きく広がっている
根の先には根尖病変が見られます。
ん~、抜歯も十分考えられるられる状態ではありますが、
歯の位置的に言って前の治療の問題が難易度を上げているようにも思えます。
患者さんと話し合って今回は残す方向で治療を行いました。
1回法で治療を行うと、
過去に根管治療を行ったようで根管内は削ってあり、根尖からは出血が見られました。
術後のレントゲン
根管充填材にはガッタパーチャーを使用しましたが、レントゲン上ではショート根充
ここで私の根管充填基準は
MTAは根尖フラッシュ(ジャスト)
ガッタパーチャーは狙ってショート根充にしています。
感覚的にその方が成功率が高い気がしています。
レントゲンを見てちょっとショートしたなと判断はしますが、ショートが原因で根管充填をやり直すことはまずありません。
だって、ゴムの入りで予後は決まらないと思っているから(笑)
個人的には根管治療はゴムを詰める前までの消毒の方がよっぽど予後に大きな因子になると思っていますし、
怒られてしまうと思いますが、貼薬というのも「たいして意味あんのか!?」と思っています(笑)
そこから半年後のレントゲン
骨も出来て来ているように見えます。
さらに1年経過後
病変は無くなり綺麗に歯根膜に戻ってくれています!
こんな経験を重ねていくと、ゴム(ガッタパーチャー)の入りで予後は大きくは左右されないなと感じます。
たまに病変の無い歯でガッタパーチャーの入りが悪いからやり直した方がいいという先生がおられますが、
私からすると「いやいやいや、歯の寿命縮めているだけだよ」と思ってしまいます。
歯科医師の言うこと=正しい意見と患者さんは捉えられますが、
現代の基準での話なのか、旧式の基準での判断なのか!?そこはポイントになってきますね!
今回の患者さんも何とか歯の保存ができて良かったです!(・o・)v
以上、一歯内療法専門医の私見でした。
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歯を残す為の外科的歯内療法(再外科)
- 2022年4月 6日 09:01
- 歯内療法日記
患者さんは昔から来て頂いている50代女性
1年前から歯茎から膿が出ているとのこと
過去に4回ほど外科処置を行っているが治らない
レントゲンを撮ると
2本歯根端切除を過去にしたようです。
中切歯(1番)は問題ないように見えますが、側切歯(2番)には病変が見られます。
この当時の私の判断は、側切歯のみ外科的歯内療法での歯の保存
根尖をカットして、MTAにて逆根管充填
中切歯はびっち骨が見られたので、並行しての外科はしませんでした。
術後1年
綺麗に骨も回復してくれました!
そこから数年経過したある日
前歯から奥の方へ突き抜けるような痛みが出始めたとのことで来院
レントゲンとCBCTで精査すると、
外科をした側切歯には問題は見られず、どうやら原因は1番っぽい
今回のケースは
セラミックのマージン不適などから考慮して根管治療で歯の保存を試みることに
根尖はカットされ大きく開いていたのでMTAプラスを使用
ここから経過を見ていき、半年後のレントゲンでも問題なく
症状も一切でていないとのことでセラミッククラウンの制作に入ったのですが・・・
1回目
両脇のメタルボンドに比べ色が白い・・・
患者さんに話をして、色の修正を行いました。
2回目で色が合いました。
このように3本ある歯の真ん中の歯をやり替え、色を合わせるというのは難しい技術になります。
*と言っても技工士さんの技術ですが
クラウンSet後のレントゲン
綺麗に歯根膜が戻ってくれています!
外科を行った歯というのは基本的に再外科で治す場合が多いですが、
ケースによっては外科した歯でも歯内療法で治せることもあります。
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