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歯内療法日記: 2020年7月アーカイブ
大きな根尖病変と初めての長期間根管治療
- 2020年7月30日 09:07
- 歯内療法日記
2017年に来院の30代女性患者さん
話を聞くと
6年前に抜髄を行い、3年前ぐらいからズキズキする痛みが出始めた。
EEデンタル受診3数カ月前に大きな痛みが出て抗生剤をのみ、クラウンのやり替えを行ったとのこと
早速レントゲンを撮ると
近心頬側根に影が見られます。
ただ、何か違和感のある所見・・・
迷ったときはすかさずCBCTを撮影
すると・・・!
!
!!
えっ~、何これ!。。。
2cmぐらい骨の中が溶け、隣の歯まで骨吸収が進んでいる。
上顎は上顎洞や頬骨弓などがあり、海綿骨の幅も広いのでたまにこんな感じで
レントゲンには写りにくく病変が隠れていることもありますが、ここまで大きな病変にはビックリ!
最初にイメージした赤丸ではなく
紫色部分が、これがCBCT上で読み取れる病変の大きさ
病変が大きくなり過ぎて、手前の第2大臼歯の根尖も取り囲んでいるので
5番を電気歯髄診断で神経の生死をしらべると。
EPT:+ (生活反応あり)
と言うことで、
最初の治療方針は【第一大臼歯根管治療、第2小臼歯何もしない】
と判断
*悪くなれば第2小臼歯も根管治療と説明
1回目の根管治療
ガッタパチャーを外すと口蓋根から膿が出るわ出るわ。。。
拍動して大量の膿が出てきました。
とりあえず、MB2を見つけ4根穿通・拡大・洗浄
治療2・3・4回を行っても膿が出てくる
また頬側の腫れも一向に引いてこない
治療5回目(治療スタートから2か月後)
ガッタパチャーを取った今の状態でもう一度CBCT撮影で再審査
膿の出かたは減ってきたが腫れは残っている
頬側第2小臼歯の辺りの腫れは、第一大臼歯の口蓋根によるものと推測
顕微鏡学会の症例報告であったインターナルアピコトミー(歯の中から根尖を削る方法)を行うか!?
やったことないので、患者さんには発案者の長尾先生に道具など聞いてくるから待っててね!と
後日学会で、長尾先生にお会いして、使用する道具などを聞き購入!
治療6回目
近心頬側、口蓋根それぞれから排膿。。。
妊娠が分かり安定期内に治療を行うことに
治療6・7回目
5回目の治療後から腫れは引いてきたが また腫れてきた。
*ラバーダムのクランプをかけると隔壁が取れる
再隔壁後、根管を見ると口蓋根から排膿(ただ前に比べると膿の量は明らかに少ない。)
治療8回目(治療開始5カ月経過)
腫れが無くなり、歯肉は綺麗な状態に
NCで洗うと口蓋根から出血(根尖は#100)
この出血を生かし、口蓋根に血液を満たしリバスキュラリゼーションみたいなことを行う
治療9回目(更に2か月後)
腫れはないが違和感が午前中だけある。(2カ月の間に4回あった)
口蓋根排膿なし、近心頬側根に出血あり
治療10回目(それから1か月後)
P根、MB根、MB2根から排膿
出産が終わったらもう一度検査を行いどうするか検討する。
水酸化Caを入れ仮コアと仮歯を仮着
治療11回目(2週後)
仮歯が取れた・・・
治療12回目(1カ月後)
出産の為に仮蓋をしっかりして、仮歯を接着剤で合着
出産が終わったら仮歯と隔壁を壊して一からやり直すと説明
治療13回目 出産後(12回目から7か月後)
腫れ、痛みはないが違和感はある
レントゲン、CBCTで検査すると・・・
ん!?治ってきている!?
この日は診査のみ
治療14回目
仮歯を削って外し、隔壁を除去 ⇒ 再隔壁から
歯の中に膿は無く、太く削っている口蓋根の根尖にも骨様の硬組織っぽいものが出来ていました。
治療15回目
1カ月に1~2回、目の奥の方に違和感を感じることがある。
歯の中に膿は見られない為、次回MTAで根管充填することに
治療16回目(治療開始から1年8カ月後)
多少ボォ~とする感じはあるとのこと
膿が出ていないことを確認して根管充填+レジンコア+仮歯Set
偏心投影
MB,MB2,P根:MTA DB:GP 使用(DB穿通なし・病変なし)
治療17回目
3か月後のレントゲン検診
腫れや痛みはない。
治療18回目
6カ月後のレントゲン検診
腫れや痛みなし!
骨の治りをCBCTを使いチェック
CBCT
だいぶ骨が出来て来てくれています!
歯茎も
腫れもなく綺麗に治っています。
治療19回目
1年後のレントゲン検診
痛みは殆どない、腫れもない
いい感じに治ってきてくれています!
CBCT所見比較
黒い所が炎症で骨がない部分 ⇒ 黒い部分が減り骨が出来ているのが確認できます。
ホント今回は初めてづくしで、いい経験をさせて頂きました。
基本私は症状が変わらなければ6~9カ月ぐらいで、治療を外科治療(外科的歯内療法or抜歯)に切り替えます。
今回、口蓋根が膿の原因でしたので、外科的歯内療法が出来ず「インターナルアピコトミー」を考えました。
これだけ1本の歯を長期間根管治療を行うのは歯科医師人生初
正直半年経過して膿がまだ出てくるので保存は難しいのかな!?と思いました。
出産という経過観察期間があり、その間に治癒傾向が現れました。
いやぁ~、人の体の不思議です。
私の中の貴重な経験でした、また長期間通院して頂いた患者さんに感謝です!m(_ _ )m
ここまで病変が大きくなってしまったのは推測で3年以上はかかっているような気がします。
もし根管治療をした歯があれば、定期診査で2~3年に1回ぐらいはレントゲンでチェックしておいた方がいいですからね。
*歯の疾患の多くは慢性疾患で徐々に悪くなり、症状が出るのは急性化に転じてからです。
今回のケース、1年後にレントゲンを撮って終わりとしたいと思います。
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知らないうちに歯が溶ける外部吸収
- 2020年7月28日 09:08
- 歯内療法日記
歯内療法を専門にしていると年に数人『外部吸収』という歯が溶けてしまう状態での来院があります。
前歯の外部・内部吸収などは外傷によるものがありますが、
奥歯の外部吸収は何が原因で起こるのかは分かっていません。
破歯細胞という歯を骨を食べる破骨細胞に似た自分の細胞が起こしてしまうことと考えられています。
患者さんは30代男性
全体的に虫歯を治療したいとのこと
奥歯の銀歯があっておらず、土台も隙間だらけであった為、
一度根管治療しておきましょうということで治療スタート
土台まで外すと。。。
この部分にデッかい穴、
歯に穴が開くのは2つあり
1つが医原性に起こる、前の先生が治療の際に開けてしまった『パーフォレーション』
もう1つが自分の体の細胞が起こす『外部・内部吸収』
開いた穴の付近の歯質から出血があるのでこれは吸収だと判断
*吸収した歯は歯髄でもない場所から点状の出血が見られます。
今回のケースは明らかに医原性ではない感じでしたので、
患者さんに説明をさせてもらい、
「使えるまでとなってしまうが、1本前の歯もないし保存を行うか!?」
患者さんは残せるのであればとのことで、保存する方向で再び治療を行い
仮歯を作り、患者さんには「1年ぐらい仮歯で様子をみさせてください」と説明し、
3カ月、6カ月、1年と経過観察
幸いなことに歯ブラシ能力が高い患者さんでいつも綺麗な口腔内だったのが大きいのか
腫れや痛みなどはない
そして根管治療から1年3カ月後
特に問題なく経過してくれています。
ちょっと前にも患者さんに言われましたが、
レントゲンはただの影絵であり、その影絵から全ての状況を知ることはできません。
しいて言えば、ざっくり悪い歯のイメージが出来る程度です。
このイメージも経験とか知識によって1枚のレントゲンでも抜き取れる情報量が異なります。
ですので、実際治療してみると
「えぇ!?」ということもたまにあります。
またレントゲンの種類にもより、見えるものは異なってきますので
病気に合ったレントゲンの種類で診断をした方が誤診も少なくはなると思います。
今回のケース、根尖病変も無かった為CBCTを撮らずに治療を行いましたが、
術前時にもしCBCTを撮っていれば、歯の穴が予想できたかもしれませんがリスクとしてもれなく被爆します。
ホント医療は結果論の部分が多く、後でああすれば良かったのかな!?という所も出てきてそれが経験値となります。
難しいっすわ歯科医療。。。(>。<)
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直接覆髄後の大きな痛み
患者さんは40代女性
以前全顎検査を行い、何本か治療をさせて頂き一旦治療は終了したのですが、
ある日突然奥歯に激痛が出てしまいEEデンタルへ連絡
この歯は過去に他院で直接覆髄+レジン充填が行われており、
全顎検査時には虫歯もなく詰め物の適合も問題なし綺麗な治療がしてあると判断し治療は行いませんでした。
関西方面の患者さんで、「その日のうちに治療を行いたい」との希望
基本的にEEデンタルは初診日には診査と説明のみで、必要があれば応急処置を行う程度で、
初診日には治療は行っていませんが、
過去に全顎検査(検査代2万円)など行いレントゲンや口腔内写真・顕微鏡映像などの資料があれば、
だいたいどのような治療になるか見当がつくので初診日に治療を行うことも可能な時があります。
*資料がないとどういう状況で何の処置になるか見当がつかないので、残念ながら当日は応急処置にとどまります。
とわいえ、近日中で空いている枠は1時間
今回の歯は、歯髄炎を起こし要根管治療と事前に判断
実際来院して頂くと、
根尖に怪しい所見がでてきています。。。
打診などから歯髄炎を起こしていると判断し、3mmの穴から根管治療
神経は死んでおり、歯髄の出血は全くみられませんでした。。。
(健康な歯髄は血液が通っており、神経が見えると出血してきます)
1時間という時間でしたので、髄腔開口・穿通(4根)・拡大・洗浄まで
2回目の来院の際には痛みもなくなり、根管充填
で、ここで「ん~、どうしよう」
以前のレジン充填、適合はいいのだが、黄色の部分のカウントゥアーがレス
(レジンのボリュームが歯の形になっていない)でここが気になる・・・
ピンクの矢印はMB、MB2
これだけレスだと物も詰まりやすく、掃除も大変なのでやり替えることにしました。
一番下の歯
治療回数2回
根管治療+土台+レジン充填の治療となりました。
今回のような直接覆髄法
非常に予知性の低い治療法で私も直接覆髄をしますが、昔より適応範囲は狭くなってきています。
特に歯髄の状態を拡大して行わない直接覆髄は失敗が多いと思われますので、
歯髄の保存に固執しない方がいいと思います。
歯の神経を残されたい方へ注意事項:http://eedental.jp/ee_diary/2010/10/post-166.html
この歯も今後経過を見ていきます( ・∀・)ノ
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歯内療法専門医 難易度高し!超石灰化根管
- 2020年7月15日 09:18
- 歯内療法日記
患者さんは40代女性
右下の歯に時々違和感があるとのことで来院
レントゲンを撮ると
大きなゴールドアンレーが入っており、隙間には【小さな虫歯】と根の先には【根尖病変】
違和感の原因であろう歯はすぐに特定できたのですが、
ん~~、これは神経が隠れてしまっていて難しい治療になりそう・・・
というか、体の防御反応で石灰化が起こり過ぎて神経が死んだか!?
1本奥の歯と比べてもらえば分かりやすいのですが、
第一大臼歯(右)と第2大臼歯(左)で神経管の形にかなり違いがあります。
歯髄腔も無くなっていることが根管治療をメチャ難しくしている要因・・・
近心根管はかろうじて、線は見えるが隠れた入り口を歯の中から見つけれるか!?
推定0.2~0.3mm
また入り口を見つけても、根の先まで線が見えるが激細で推定0.1mm以下・・・
図で表すと
このピンクの点を探し、神経管を傷つけないように根の先端まで掃除・・・
*因みにこういうケースで「パーフォレーション(歯に穴)」が起こりやすいです
歯科医師ならこの難度はよく分かると思いますが、 かなりの難易度。。。
患者さんにはまず上から通法の根管治療をして、神経管が探せない場合は後で外科的に根の先を切り取り逆から薬を詰めると説明
1回目の治療で
エアースケーラーにエンド用のダイヤモンドチップを付け、顕微鏡下で神経管の入り口を探す為に
少し削って、0.1mmのオープナーで突き、確認の繰り返しで根管口を探し、
そこから0.06mmと0.08のKファイルでクラウンダウン
0.08mmのファイル穿通後Ni-Tiファイルで拡大(プロテーパーゴールド)
普通のネクローシスパルプなら現在1回法で治すことが多いのですが、さすがに神経管を探すのに時間がかかりました。
2回目の来院の際には腫れもなくなり、重い感じの違和感もなくなったとのこと
根管充填+コア
近心根は2本の神経管が「Y」字になっていました。
*GP使用
いやいや、こういう激細根管はミス1つ許されないというか、レッジなどを作ってしまうと
二度と本来の根管が治療できないのでヒヤヒヤの根管治療でした。
この歯を最初治療させて頂けたので根の先まで綺麗に治療できたのかと思います。
患者さんに覚えていてもらいたいのは、根の治療は1回目が非常に重要です、
やり直しの根管治療になると前回の治療の後処理からスタートになるので難易度は上がり成功率は下がってしまいますヽ(- ω - )
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抜歯を勧められた歯の根管治療
- 2020年7月10日 09:05
- 歯内療法日記
患者さんは40代女性
15年ぐらいまえに神経を取った歯が痛くて、歯茎からは膿が出てきた為に歯科医院に行くと
「抜歯した方がいい」と言われたとのこと
何とか残せないかとEEデンタルへ
歯茎からは膿が出てきて、歯も骨の支えがないのか揺れます。
レントゲンを撮ると
ぼんやり病変のような影はあるがはっきりしない・・・
下顎大臼歯、特に第2大臼歯は分厚い皮質骨に覆われているので、根尖病変がレントゲンで映りにくい時があります。
そんな時はCBCT
歯の周りの骨が全くありません、これだけ骨が逃げてしまうと歯が揺れていても不思議ではありません。
デンタルで照らし合わせるとこんな感じ
患者さんの希望があり、残せそうであればトライするのが歯内療法専門医
3回で根管充填まで、
前回の治療でたぶんラバーダムをしなかったからだと思いますが、
根管内はドロドロにGPが汚れていました・・・
樋状根(複雑な神経管)をMTAにて根管充填!
クリアランスの問題からTEKは入れずに、レジンコアを対合歯に当て経過観察
*このケース仮歯を入れても強度不足ですぐに割れて取れてくるので。
コロナ明けで久しぶりに来院されたので、レントゲンを撮らせてもらいました。
おっ!いい感じで骨出来て来てくれていますねぇ!
歯の揺れも腫れも痛みもなく順調とのこと。
この状態であれば仮歯を作って本歯を作って行っても大丈夫でしょう!(・∀・)ノ
全部が全部残る訳ではありませんが、歯内療法絡みで抜歯宣告を受けてしまったら
抜く前に一度歯内療法専門医に相談した方がいいですよ。
インプラントと言っても、自分の歯とは別物ですからね!
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歯内療法専門医 想像と推測からの治療
- 2020年7月 7日 09:01
- 歯内療法日記
患者さんは50代女性
セラミッククラウンを入れた後も腫れてきて大学病院や市民病院へ行き
過去2回根管治療を行っているが良くならないとのこと
レントゲンを見ると、
大きな病変が見られます、それと同時に歯質の残存量が少なそうで
どうやら次の根管治療が最後の治療になりそうな雰囲気
患者さんに説明を行い保存する方向で2回法で治療
結果的に言えば、なんとか保存はできました、
1年で骨もびっちり出来てきてくれています!
実はこの歯、神経管が2本寄り添うように並行して存在し、
白い線が重なっているように見えます。
道具が入りにくい側の神経管(舌側)が全く手づかずでそこが感染源になってたと推測されます。
逆にいうと、以前の治療で治療されていた側は石灰化しており問題はないと判断し、そこまでを綺麗に仕上げておきました。
歯内療法専門医は下顎の前歯・小臼歯は2本の神経管というのが10~20%存在するという頭があるので、
この部位の治療を行う際には2本目の神経管が隠れていないかを注意深く探します。
このような10~20%にしか存在しない神経管を見落とした場合の予後は悪く、
何度治療しても治らないから、外科 or 抜歯が必要と判断されてしまうこともあります。
神経の治療は時に0.1mm以下の単位の治療も必要とされる繊細なものです。
私のファイルボックスにも0.06mmの極細のファイルが入っています。
(髪の毛より細い金属のヤスリです)
毎回必要な訳ではありませんが、極細の神経管を見つけた後にはこの細さの道具でないと治療できない場合もたまにあります。
根の治療は出来る回数も決まっているので、悪くなった歯を保存したい患者さんは一度歯内療法専門医に相談してみてください。
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