日本の根管治療の現状
- 2016年8月 5日 09:15
- 歯内療法日記
毎度の出だしなんですが、
日本の根管治療は保険制度がある為先進国の中でも
群を抜いて安い治療費で治療を受けられています。
http://eedental.jp/ee_diary/2016/03/post-1352.html
海外で10~20万近くする治療が1万ぐらい(窓口負担は3000円程度)で
治療を受けられています。
ただ、安過ぎる為に教科書的な理想的なことが出来ない現状もあるのですが、
歯科がおかれた状況を知らない患者さんは、
根管治療の成功率50%ぐらいには納得できないかもしれません。
この前の歯内療法学会の時に弁護士の方が話されてビックリしたのは、
東京地裁の判断によると、根管充填材が根尖2mm付近に来ていない場合
歯科医師の治療に問題があると判断され100万円近く支払い命令があったそうです。
経験上ですが、たぶん6割近くの奥歯は
「根管充填材が根尖2mm付近」
という基準は満たしていないと思います。
はっきり言ってしまえば、
ほぼ赤字でしている分野の根管治療で【質】が確保できなければ
患者さんに100万払えと言われれば誰が根管治療などするのでしょうか?
歯科医師の年収など600万といわれていますから100万の支払いでも相当きついです・・・
個人的には世界水準の治療基準を持ってくるなら、
まず窓口の費用も同じにしないと同じ材料・器材、時間にはできませんから
海外に比べ1/20~1/10の保険治療費の場合、
世界基準の1/10以下の基準までハードルを下げないとフェアーではない気がします。
とはいえ、下のレントゲンのように
・「頑張ってこれ?」
・「ほぼ手を抜いたケース?」
になっていると患者さんも「なんでしっかりやってくれないの?」
とはなってしまうと思います。
このレントゲンも3mm程度しか入っていませんし、大きな病変も見られ腫れてもいます。
ただ、専門的な意見をいわせてもらえれば、
【根管充填材の入り】と『成功率』はあまり関係ないのです!
*根管充填材が綺麗に入っていても細菌感染すれば再治療が必要になります。
根管充填材が綺麗に入るより、ラバーダムなど菌が入らないようにしてやることが歯を長持ちさせる・成功の因子なのですが、司法の判断基準自体間違えている日本。。。
また、初めて神経を取る抜髄処置と違い、
レントゲンの感染根管ケースなどは神経管が既に石灰化しているケースもあり、
根の先まで根管充填材が入らないこともあります。
*人工的にファイルで穴を作ってそこにゴムを流し込んでも治りません。
腫れて膿が出ていたので再治療を行ったのですが・・・
今回の近心根は頑張ってここまで、
その後経過をみて行くと、
膿も止まり1年後にはだいぶ骨も出来てくれました。
しかし、根充剤が入っていないというだけで裁判されれば
日本の歯科医師のほぼ7割は負けてしまい廃業となりますね。
日本の歯科保険医療は医療従事者の犠牲の上に成り立っているのに
この司法の判断はまさに「鬼!」
ひねくれた解釈をすれば、
手間のかかる根管治療などしなくて抜きなさいという判断でいいのでしょうか?
個人的にはもう少し国民が歯科保険治療の置かれた状況を知った方がいいかと思います。
でなければ、
ポンポン抜いてネジ治療(インプラント)がこの国のスタンダードになって行きますよ(p・Д・;)
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