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根管治療に付きもののフレアーアップ(根管治療後の大きな腫れと痛み)
- 2014年10月 2日 19:36
- 歯内療法日記
根管治療を行っていると、
治療後に鎮痛剤が効かないような「大きな痛み」や「腫れ」が出ることがあります。
これはロシアンルーレットのようなもので、どの歯に出るか分からないもので、
どれだけ優れた先生でも、術前にこの歯は大きな痛み・腫れが出るなどとは判断できません ガ━━Σ(゚Д゚|||)━━ン!!
この術後起きる『大きな痛み・腫れ』 のことを【フレアーアップ】と言いますが、専門医のデーターでは
フレアーアップ(定義:術直後に救急処置が必要なケース)
・6つの論文のメタ解析を行ったIgorらは982例中82例(8.4%)
・Tropeは474例中12例 (2.53%)
・Waltonらは、フレアアップの発現率を(3.17%)
・Morseらは168例中33例(19.6%)
と報告があります、
中でも信頼性が置けるのが最初のメタ解析によるデーターの8.4%ではないでしょうか。
フレアーアップの定義の問題ですが、19.6%は多過ぎですね^^;
ただし、この数字は歯内療法専門医のデーターで、
細菌感染をあまり考えない日本の根管治療ではもう少し起こる割合は多いかもしれません。
フレアーアップが起こりやすいケースは分かってきています。
・根尖病変を有する歯に多く見られる (抜髄の4倍) (Trope)
・術前に疼痛のあるものは術後にも見られやすい (Torabinejad 1994)
・オーバーインスツルメーション ・オーバー根管充填は見られやすい (Georgopoulou,M et al IEJ1086)
EEデンタルでも極たまにフレアーアップのような症状が起こってしまうことがあります。。。( ´Д`;)
だいたい年に2~3ケースで、パーセントで言えば2%ぐらいです。
歯内療法の参考書にも書いてありますが、
適切な根管治療が出来ている歯科医院ほどフレアーアップの割合は少なくなるとのことなので、
今の所EEデンタルでの術式は大きくは間違っていない!━━v(´・ω・)v━━
ただ、ゼロにはできないのも事実。。。(TДT|||)
恐るべし2%のロシアンルーレット
・術前時に治療後のフレアーアップの説明を行いますが、(特に感染根管)
もし、起こってしまったらどう対処するか!?
1、痛みが出てしまったら、原因を考える!
抜髄ケースの多くは「根管形成不足による残髄」かオーバーインストゥルション
2、大きく腫れてきたら、原因を考える!(+抗生剤の投与5~6日)
a、根管から排膿があるか?ないか?
b、歯茎が腫れた、切る・切らない?
極たまに排膿が出来ないことによる内圧上昇 ⇒ 穿通・#30~#35程度まで根管拡大を行う( 太く削っても排膿するわけではないので注意)
20~30分しても排膿が止まらない時はその日のオープンを考える。
3、オーバートリートメントによるもの ⇒ 抗生剤投薬(3~6日)+咬合調整
4、オーバー根管充填 ⇒ 抗生剤投薬(3~6日)+咬合調整 ⇒ だいたい待てば治る
その他にフレアーアップが起こりやすいケース
*不適切な手技によるもの
・時間に焦るあまり中途半端に根管を触る
・根管洗浄の不備
・根尖部の過剰拡大
*細菌感染によるもの
・ラバーダムなしの治療
・隔壁がないような状態での治療
・カリエスの取り残し
・根管内容物、細菌の根尖孔外への押し出し
・器具の滅菌不足
*その他
・不適当な根管貼薬(根尖孔外への押し出し)
・咬合性外傷
私が思っているのは医療とはできるだけ無痛下で行うのが原則ですから、
根管治療中は必ず麻酔をした方がいいと思っています。
私は根管治療の際には100%麻酔を使わせてもらい、無痛下での治療を行っていますが
その方が術後疼痛の頻度は少なくなる気がしています。
*麻酔に関しては保険治療だと2回目から歯科医院が赤字で行わないといけない処置なので、ここにもコストの問題が。。。
(麻酔って、麻酔液、浸麻針、結構な費用がかかり気を使う治療なんです)
また痛みの中治療を続けることにより『感作』が起こってしまい、
痛みが定着すると患者さんは地獄を味わい、転院を繰り返しノイローゼに・・・
追記:「エンド専門医に治せない歯痛」 セミナー 【非歯原性歯痛】
http://eedental.jp/ee_diary/2015/09/post-1241.html
不適切な根管治療を続けることで痛みに悩まされることもあります。
本来根管治療は小外科手術で痛みは付きものですから、、
その痛みへの配慮というものは私は必要だと考えています。
ここまで書くと患者さんは怖がってしまいますが。。。( ̄ロ ̄;)
フレアーアップが起こっても適切な処置をすることで歯は残せます。
またフレアーアップが起こっても歯が残る成功率には大きな影響はありません。
では、今年起こってしまった1ケースを
術前(銀歯の歯)
実はこの銀歯神経が死んでしまい根管治療が必要でした。
患者さんに説明をして、感染根管治療をスタート!
1回目の治療を終え、フレアーアップの説明をして終わると、2日後
「先生、おもいっきり腫れてきました。。。」
レントゲンを撮ってみると
赤丸の黒い部分が骨の無くなった所
黄色の黒い部分が大きくなっている(骨が更に無くなった)
個人的には「まさか、このケースが腫れるの!?」とかなり意外でした(p・Д・;)
ということで、腫れてきてしまった患者さんには抗生剤を6日ほど飲んでもらいました。
(その間2~3日に一度来院してもらい腫れ、痛みの状況を診ました)
その後、腫れの引いた所で通常通りの根管治療を行い、
術前 ⇒ 9か月後
フレアーアップが出た=治療の失敗ではなく
慢性炎症を治療で急性転化させてしまっただけで、適切な処置を行なえばその後は普通の歯と同じ経過をたどります。
9カ月問題が無かったということで、ようやくオールセラミックを入れれました。
綺麗なオールセラミックが入りました。
一応、感染根管治療においては、極たまに腫れることがあると説明はさせてもらっていますが、
やはり腫れると「2%って、まさか私が!?。。。」と思われてしまうそうです(´ヘ`;)
個人的には開業以来、『抜髄治療』でトラぶったことはありませんが、
感染根管(やり直しの治療)では今回のようなことが稀にありますので患者さんも知っておかれてください( ̄ω ̄;)
個人的には2%(年に2~3人)の為に、治療後全ての患者さんに術後抗生剤を飲んでもらうような治療はしていません。
(これは先生のスタイルの違いであり、患者さんの為に抗生剤を毎回出される先生もおられます。 ただ、耐性菌の問題などのことを考えると不必要にも思えます)
以上、根管治療後どうしても起こってしまう『フレアーアップ』でした。
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