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歯髄保存は戦略治療
- 2022年1月19日 09:03
- EEデンタル こだわり
閉め切られてしまいましたが久しぶりに歯チャンネル見ていて、気になったので
以下質問内容
約1年前(一昨年の12月頃)、5本ほど虫歯の治療をしました。
その中で、左上4番と右上7番の虫歯が、あまり自覚はなかったものの進行しており、少し神経まで達しているくらいでした。
過去に虫歯で歯の神経を抜いて銀歯を被せる治療をしたことがありましたが、左上4番と7番は先生からの説明を受けて一部だけ神経を除去して神経を保護するMTAセメントというものを使い、ダイレクトボンディングというので詰めました。
そのときの説明では、あとで痛んだら神経を抜くことになるが、基本は大丈夫といわれていました。その後、たまに痛んだりすることがあり、それでもよくなったりもしたので放置していました。ですが、年末に右上の奥歯がかけたと思ったの同時に激痛が走り、少し痛み止などでよくなったのですが、年始早々受診しました。
その結果、2本とも神経がだめになって膿がたまりはじめているといわれてしまいました。右上7番のところは、ダイレクトボンディングで詰めたところと周りの歯の山になっている部分が大きくかけてしまったようで、中側は虫歯でした。
先生には、MTAセメントも上手く行かないこともあるから仕方ないといわれたのですが、それなりに高いお金を払っています。また、1年以内なら保証期間になっていたのですが、年始になってそれもすぎ、悪くなったのは治療後1年以内だと思うのですが、保証も聞かず、しっかり値段をとって治療されることになりました。
先生は淡々と状況を説明してくれますが、淡々としすぎていてこちらの気持ちがわかっているのだろうかと、すこし納得がいかないというか、モヤモヤします。
今回は、神経を完全に抜いて洗浄したりするようですが、保険の治療でやる予定です。右上の7番は神経を抜いて銀歯を被せ、左上4番は、なんとか外側だけ歯を残して、噛み合わせの面や内側は銀歯で被せるような形になるようです。4番が丸ごと銀歯にならないのはよかったですが、これなら始めからMTAセメントやダイレクトボンディングなど自費のものをやる意味はなかったのではないかと思えます。
やはり、はじめから保険で治療しておくべきだったのでしょうか。
ちなみに、MTAセメントとダイレクトボンディングをやった2本と同時に治療したほかの3本は、保険でやりましたが問題ないようでした。
保険治療より費用を出したのに予後が悪いとガッカリしてしまいますよね。
ただ、医療は術者がどんなに頑張っても神経保存治療は失敗に終わることがちょくちょく出てしまいます。
今回の治療の目的は歯髄保存(神経の保存)だと思います。
これは虫歯が大きいのでMTAを使い直接覆髄しましょうという治療方針だと思うのですが、
虫歯が大きくても神経を残すという観点からすると、直接覆髄ではなく間接覆髄を選択した方が成功率は高かったと思います。
書籍を読んでいても直接覆髄は分からないことが多いとその道の大学の教授もおっしゃっています。
ですので、私であれば最近はAIPCやシールドレストレーションという
虫歯を残したまま行う間接覆髄を選択したと思います。
暫間的間接覆髄(AIPC:非侵襲性歯髄覆罩) - EE DENTAL_Blog
わざと虫歯を残す治療法「シールドレストレーション」 - EE DENTAL_Blog
例えば自分の娘の乳歯
当然親であれば「後続永久歯の為にも神経は保存させたい!」と思います。
娘の大きな虫歯でも「主はシールドレストレーション」を選択しました。
3本虫歯があり1本直接覆髄、2本シールドレストレーション
*直接覆髄もMTAは使わず、セラカルというMTA成分が微妙に入ったレジンを使用
私も昔は直接覆髄を積極的にしていましたが直接覆髄の予知性の低さは感じますし、
またMTAを歯冠部に使用すると将来的に黒変し、治した自分は大丈夫と分かるのですが、
他の先生が見た場合また虫歯が出来たと診断してしまいます。
ただ、保険医療機関での神経保存治療は
自費材料であるMTAを使わないと自費化できないのでMTA直接覆髄と自費レジンという治療計画になったと思います。
保険適応であるAIPCやシールドレストレーションなどは非常に手間がかかる割に治療が上手く行かないと
次のただでさえ安い保険治療の抜髄の治療費から治療費の減額があるので、誰もやりたがりません。
非常に手間のかかる歯髄保存を行う為に時間をかけたいので、
わざわざMTAという自費材料で治したいという気持ちも分からなくはなですが・・・
治療方針で1つ疑問があり、
術前時にどんなに検査をしても直接覆髄が必要(MTAが必要)などは分からないと思います。
直接覆髄の多くは偶発的露髄(虫歯を削っていったら神経が出ちゃった)
その露出した神経を隠す為にMTAを使用し術式も直接覆髄を行ったとなります。
つまり術前にMTAが必要か!?
は分からず術中に初めてMTA直接覆髄が適応だと分かる処置なのです。
後、直接覆髄でも材料をMTAにすれば飛躍的に成功率が上がると言われれば
違います!
MTAを使用した方が質のいい保護層(第3象牙質)は出来ますが、
他の材料に比べ覆髄の成功率が極端に高くなることはありません。
*ただ、覆髄材のなかではMTAが最も優秀であることは間違いありません。
また直接覆髄の成功率は年々低くなる傾向があり、
1年目より2年目、2年目より3年目と年々悪化し成功率が下がって行くということまで分かっています。
質問者を治療した先生は『なぜ予後を追わないのか!?』ちょっと疑問。。。
自費治療で直接覆髄もレジンもやっているのに、1年来院がなかったから保証なし・・・
自費専門でやっている歯科医師としてはアフターフォローなしのちょっと乱暴な自費治療だなと思ってしまいます。
神経保存というのは診断と戦略が大切なポイントであり、MTA(薬剤)が大切なポイントになる訳ではありません。
患者さん的には〇〇という薬剤を使えば成功率が上がる的なイメージがあると思いますが。
私の歯髄保存に対する今の見解です。
そう言えば昔、私が直接覆髄を押していた頃にあるベテラン先生に
「先生は若いからそういう考え方なんだよ」と言われたことを思い出します。
今になって思えば、教科書的な理想ばかり追うスタイルで完全に経験不足だったと思います。
医療って、エビデンスだけではなく自分の経験からのフィードバックというものも財産になります。
今回の質問者の方は直接覆髄の失敗、失敗に気づくの遅くなったためにネクローシスパルプ(神経が死んだ後に細菌感染が起こった)となり、
抜髄の時より細菌感染があるぶん根管治療の成功率は下がってしまっていますのでより慎重に根管治療を行わないと、抜歯のリスクまで出て来てしまっています。
「神経を保存が結果として抜歯を早める」
となることもあるので凄く注意された方がいいと思います。
歯の神経を残されたい方へ注意事項 - EE DENTAL_Blog
今の保険治療費はホントまじめな医療を行う費用設定ではないとは思いますが、
色々な理由を付け自費化していく風潮は結果として、歯科医療の評判を落とす結果に繋がりかねないと思います。
自費治療がやりたい歯科医師は、保険治療を辞めて自費治療専門になればいいだけの話だと思います。
ただし、保険治療と違い自費専門は結果だけを求められますし、治療の前の診断力が非常に勝負を分けます。
以上気になったのでブログにさせてもらいました。
追記:
基本的に覆髄処置を成功に導く為には、薬剤より象牙質の封鎖性を重視すべきかと思います。
書籍にも書いていますが、覆髄を行った歯は速やかに象牙質を封鎖してやった方がいいです。
ただ、保険治療では覆髄が上手く行くか、
数カ月仮蓋のままで待ち症状のないことを確認して最終修復物治療を行いますが、
仮蓋というのは封鎖性が乏しく、大丈夫か待っている間に細菌感染を起こし結果失敗に終わることも十分考えられます。
これは先に書いたように、最終修復物を作った後に症状が出た場合
歯科医院側が治療費の負担などしなくてはいけないので、保険治療では仕方がないことだと思います。
私は基本的に保保険治療の縛りがないので自分が理想と思う治療を行います。
(それをする為に自費診療医を選んでいます)
ですので、このブログに書いてあることはEEデンタルのやり方で、
保険治療では叶えられない理想的なことも多々書いております。
*質問も自費治療での話だったので自費治療での話を書いております。
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